躍動する生々しい言葉。状況描写の臨場感の凄さ。石丸氏の文章はよどむことなくジャンキーのイカレた状態を清清しいまであけっぴろげに伝えてくれる。「文章を書き殴る才能があった」からドラッグで自滅せずにすんだというのは本当だと思う。読み物として圧倒的なエネルギーに溢れている。各章のレイアウトのデザインもすばらしく効果的。ぐるぐると活字が渦をまく頁にはやられた。
ドラッグとは肉体・DNAレベルの問題であって意志のはるかに及ばない領域のこととは至言だ。
自分の中に新しいスペースが生まれたのを感じた。本を読む歓びの体験。読んで良かった!
まさにこの著者はクズと呼ぶに相応しい。もちろん褒め言葉なんかじゃなく、そのまま貶し文句として。
しかし本当に貶されるべきなのは!
SPEEDなんて安易な名前のついたこの本が、最高に面白いことだろう。
読めすすめるうち脳みそが震えだし、あっという間に引き込まれてしまう。
ふざけた構成に、イカれた文体に、まるで飾らない話者の視線、そのどれもが完全無欠にさえ思えてくる。
ドラッグ体験本なんてのはそこら中に転がってるし、ネットのある今ならそんなやつらの発言には微塵の希少価値もない。
ところが、悲劇仕立てでもなければ、喜劇でも自慢でも反省でも小馬鹿でも小利口でもない、飛びぬけてリアルなドラッグとそれにまつわる生活の数年に渡る断片を、追体験し観察させてもらえる文章ってのは、今でもまず手に入らない。
これはもう、読んで楽しまなきゃ、ウソでしょう。
(※楽しむのは「読むこと」です。勘違いしないように・・・)
重ねて書くが、私は著者の生き方に一片の敬意も抱けない。
そしてこんな著者のファンになんて絶対ならないし、なりたくもない。
しかし、石丸元章がこのクオリティで書き続ける限り、私は買いつづけるつもりだ。
それとこれとは別なんだから仕方がない。