インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

思考する言語〈上〉―「ことばの意味」から人間性に迫る (NHKブックス)

価格: ¥1,218
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日本放送出版協会
Amazon.co.jpで確認
人間の思考、は何から生まれるか ★★★★★
ピンカーの待望の邦訳。
これであと『単語と規則」が邦訳されれば三部作すべてがそろうことになる。

本書では、言語を手掛かりに人がどういう考え方をしているのか、その枠組み部分を分析していく。
ピンカーのとる立場は「概念意味論」という、思考の基礎的な言語(事象の捉え方や分類の仕方に関する枠組み)が語のベースにあるというものだ。
こういうのは、例えばなぜある動詞では「SVAonB」と「SVBwithA」がどちらも使えるのに、別の動詞では一方しか使えないか、のようなものに表れている。
こういう事例をたくさん集めて、丹念に「思考の素材」(本書の原題)をあぶりだしていく。

そして、これを軸に、極端な生得主義や、極端な言語決定論を批判する。


ピンカーは以前はチョムスキー主義者のように見られていたが、最近では考えを異にするようになり、レイコフのようなメタファー論を積極的に取り入れるようになっている。(ただしレイコフほど相対的ではない)
そうした「転向」も垣間見れる一冊である。
「ピンカー学」の集大成 ★★★★★
 数々の名著を世に送り出してきたピンカーの言語論・認知科学論の集大成。基本的なエッセンスとしては、言語学の比較的基本的なトピックなのだが、視点や取り上げられている例、そして文体がユーモアとウイットにあふれ、論旨が明快でたちまち読み終えることができる。
 第一章では、ことばというものを「思考」「現実」「社会」「感情」「人間関係」とのかかわりから問題意識のありかを示し、本書の知的冒険の地図をかかげる形だ。
 第二章では、様々な構文をあげて、考察を深めるとともに、そこから人間の認知や思考の「くせ」を明らかにしていく。単なる表象的な言語論をこえて、人間性の本質に切り込んでいく格好だ。
 第三章では、いくつかの主要な議論を整理し、言語と認知の関わりにして明晰に分析していく。極端な生得主義やウォーフ主義などを丹念に検証し、科学的な結論を目指していく。以前の「言語を生み出す本能」より、発展した議論が展開され、立場の違いを超えて納得できる説得力のあふれる誠実で穏健な議論である。
 ピンカーは広い意味では生成文法家だが、近年はチョムスキーの「主流」とはいささか趣を異にしている。また、認知言語学に歩み寄りを見せているともとれる主張もある。ともあれ、図式的な対立を乗りこえた言語論を味わうことのできる本書を、すこしでも言語に興味のある方すべてにぜひお勧めしたい。
言語の深層に内在するかくれた形 ★★★★☆
ある動詞にとって、使える構文や使えない構文があるのはなぜか。例えば
Amy poured water into the glass(内容所格構文)とは言えるが
Amy poured the glass with water(容器所格構文)とは言えないのはなぜか、といった疑問を筆者は動詞の持つ空間、時間、因果性、所有、目的といった性質に注目することで、説明していく。筆者は言語は思考そのもの(言語決定論)とか人間は生まれつき基本概念を表象する能力を持っている(生得主義)といったライバル理論を検証し、それらの理論の限界を明らかにしつつ、動詞の自動詞・他動詞や使役構文が使えるかどうかを決めるのは言語の奥底にある空間、時間、因果性、所有、目的といった、より抽象的でより普遍的な意味要素によってであり、言語はそれらを見るための「覗き窓」にすぎないという概念意味論を提唱する。本書で筆者が対象にしているのは英語だが、高校生レベルの英語力があれば十分理解できる。じっさい英語が得意とは言えない大学生の僕でも興味深く読むことが出来た。英語が得意な方はもっと楽しめるかもしれない。
簡便な一覧 and テーマの発見に最適 ★★★★★
ピンカーの最新邦訳。 いくつか気になる点がありますが、しかし非常に刺激的で
面白いこと、このうえない。 私は人類の普遍性とか言語の生得性を支持するので
一層そうなのかもしれませんが、そうでない 立場の方も、実に興味深く読めることは
請合中。上・中・下巻、あっというまです。

様々なディシプリンの様々な立場を簡便に一望するにも、自身のテーマを発見するにも、
非常に 好適なシリーズです。すごいまとめ力っていうか構成力だな、と。
面白く有益なことは間違いないので、以下、少々気になる点を。

邦訳について、この書名「思考する言語」はNG。“思考の素材”という本来のタイトルの
正確な 訳でない以上に、本書でピンカーが批判している立場を代弁するかのような訳語に
なってしまって いる点が決定的にNG。

いろんな学術的分野を縦横に横断して、いろんなサブテーマを盛り込んでいる点は高く
評価できる 一方、ちょっと議論の根拠の粒度、というか理路のリジッドさのバラつきが
気になります。 言語学、心理学、認知科学、神経科学、人類学の様々な文献を縦横に
利用しているけれど、それぞれ の議論の立論基盤のバラつき具合は、著者による取捨と
構成によっても補えていないのでは?
とりわけ本書前半の動詞が許容する構文の違いといった認知科学や言語学に立脚した
話題と、本書 後半の礼儀正しさやタブー語についての心理学や人類学に立脚した話題
は、その立論構成の緻密さ 度合いの差が目立ちます。 よって、本書によって各学術
分野を概観し様々なテーマを拾うにしても、受け入れて良い部分と強く 懐疑的になる
部分がはっきりわかれるので、ここは慎重になるべきかも。

最後に、ゴフマンへの言及が多く、ピンカーの著書では例外的に社会学関連の引用も
多かったけど、 上述の学術各分野に「社会学」が同列に参加できる日を待ち望み中。