言語は人間の知性の極みではなく「技術を獲得しようという『本能』である」
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本書は、言語は人間の知性の極みではなく「技術を獲得しようという『本能』である」
というダーウィンの説を、現代の最新研究結果で補強しながら、述べた本である。
つまり「言語さえ、ダーウィンの自然淘汰の頚を逃れられない」ということである。
基本的な文法のルールなどの言語獲得は、生得的なもので、文化として学習するのは、
語彙などに限られると言い換えることもできる。
となると、言語を獲得できないヒトは、遺伝子に何らかの損傷があり、
言語を持たない動物にそだられた狼少年(これは虚偽であることが明らかだが)だとしても、
基本的な言語は獲得できるということになる。
もちろん言語が、思考を枠付けるという説も誤りであることになる。
よくありそうな日本語思考とか、英語思考というのも、似非科学的な言説であるということだ。
会話は理解できても文字化されるとわからないという、学習障害も、この切だと腑に落ちるのである。
大人になってから、他言語を獲得するのが大変なのもそういうことだったのかと、
それに該当する僕は思うのである。
言語について考えるすべての人必携の書
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久しぶりにとても面白いくてためになる本を読んだと思う。
言語学といえばどうしても難解なイメージが付きまとうが、
このスティーヴン・ピンカー氏の語り口は平易であり、難しい
内容をわかりやすく説き進めていってくれる。
この本を読むまではウォーフとサピアの言語決定論に代表
されるような「人間の思考は言語に依存する」という意見や
子供が言葉をしゃべれるようになるのは親が教えるからである
という意見を信じていたが、、、
実際にはそうではないことが理解でき、目からうろこが落ちた
気分である。
スティーヴン・ピンカー氏の考えはまさに現代の最新の
言語学の一翼であり、言語について考える人は必ず読んで
おくべきである。
一般向けチョムスキー理論
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言語を習得し、思考する際には、人類に普遍的な構造が存在する。
こうしたチョムスキーの論を一般向けにわかりやすく書いているのが本書だ。
まず筆者は、「言語が思考を決定する」といった、今日の哲学者にうけるドグマを批判する。
そうしたドグマは、異なる民族を「自分たちとは本質的に異なるんだ」と好奇の目で見たり(イヌイットには雪の語彙が多い、というのは、イヌイット=未開のイメージを強化する)、言語をもたない人を差別したりするだけだ。
言語はせいぜい思考の手助けをするぐらいで、本当に思考をつかさどっているのは人類に普遍的な心的言語である。
言語を使うには、文法をきちんと守れねばならない。
しかし、文法は意味とは別のものだ(『緑色が眠る』のような、ナンセンスだが文法的な文がある)
また、文は、何層にも入れ子式になることができる(いわゆる複文)。
だから、あらかじめ可能な配列を設定しておいて、その中から単語を引っ張り出してならべるという方法では文法は守れない。
そこで登場するのが普遍文法だ。
普遍文法は生まれたときから頭の中に存在している。
そしてそれにのっとることで、母語を速やかに習得していくのだ。
このことは、幼児による実験でも確認されている。
脳が言語をつかさどるのだから、当然言語を作る遺伝子も存在する。
そして、今日のような言語能力は、進化の過程で獲得されたものだ(これはチョムスキーと異なる点である。チョムスキーは言語能力を進化によるものだということを認めたがらない)
本書では、全体にわたってユーモアにあふれた部分も多く、楽しく読み切ることができる。
ただ、これは仕方がないことだが、例文は全部英語なので、訳と解説は付いているものの、やはり日本人の読者にとっては読みづらいところもあるだろう。
チョムスキー理論の入門書としても非常にいい本だろう。
あぁ、お偉方に読ませたい。
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こういう考え方が十分紹介されていれば、日本の言語を取り巻く雰囲気がここまで非科学的で陳腐になる事はなかった?
もはやこぎみいい。
95点
本能としての言語獲得機能
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言語の獲得が人間の本能として、脳内に組み込まれていることを、
ユーモアを交えながらわかりやすくかつ深く解説したものです。
ゲノムメカニズムが脳内配線を大まかに決め、幼少期、成長期を通じて、
言語の獲得・活用に関する脳内配線が決まるというものです。
従って、大人になってからの外国語の習得が難しいこと、
外国語の習得・活用は母国語と異なる脳内配線を使うこと、
が本書で詳しく解説されています。
言語といえば、ノーム・チョムスキーですが、
ピンカーはその弟子でありながら、チョムスキーを超えた理論を展開しています。
進化心理学者であるピンカーは、本書を皮切りに、
進化理論をベースとして人間の本性に迫っていきます。
「心の仕組み」「人間の本性を考える」も併せて読まれることをお薦めします。