Cyclorama
価格: ¥815
『Cyclorama』は意外なほど鮮烈なカムバック作だ。確かに、装飾過剰気味なキーボードやギターのパッセージや、クイーンのサウンドをパクったかのようなアンセム風のコーラスがやたらに出てくるし、少なくとも1曲(7分間近い「These Are the Times」)、ストーンヘンジ時代のスパイナル・タップの霊を呼び寄せかねない曲がある。
だが、テネイシャスDがアシストし、かつてのチープ・トリックみたいに活気のある、珠玉のようなパワー・ポップとなった「Kiss Your Ass Goodbye」で、必殺のフレーズを繰り出してくるスティクスをひとたび確認すると、どういうわけか何もかも許せてしまう。こういうところや、その他の小さなお楽しみ――ブライアン・ウィルソンの壮麗なヴォーカル・アレンジがさえる「Fooling Yourself (Palm of Your Hands)」のリフレイン・パート、「Bourgeois Pig」で聴けるビリー・ボブ・ソーントンのしわがれた物悲しいうめき声、そしてもちろん、ジョン・ウェイト(この人を抜きにしてクラシック・ロックの人脈図は完成しない)――のお陰で、めそめそしたセンチメンタルな曲「Yes I Can」(残念ながら、サミー・デイヴィスJr.の同名の自伝とは何の関係もない)への抵抗感がどこかに行ってしまうのだ。
『Cyclorama』は、商業的なピークを迎えていた時代のスティクスが見直されるきっかけになるだろうか? たぶん、ならないだろう。しかし、カジノや地方のお祭りでドサ回りをやっている同僚たちとは比べものにならない音楽的なヴァイタリティをスティクスが持っていることは証明してくれた。(Bill Forman, Amazon.com)