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密会 (新潮クレスト・ブックス)

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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ひとは誰でも ★★★★★
失敗したくないと思いながらへまをやり、
こうしてはいけないと解っていながら愚かな真似をする。
悩みのないひとはいないし、何の問題もない家庭もない。
そういう、いわばあなたの隣人の、いや、あなた自身の物語がここにある。
結局のところ他人の暮らしがじぶんとさほど変わりないことを知って、
安心したいのだ。市井の人々の物語を読みたいのは、そんな理由からだ。

CMを作るとき、登場人物の氏名・年齢はもとより、
職業・家族構成・趣味なども考えるのだと聞いたことがある。
トレヴァーが細かな人物設定をすると知り、それと同じだと思った。
ただ彼が書くのは、B面のほうなのだ。
たった三十秒ほどのフィルムから、わたしたちはどれほど多くの情報を
読み取ったり、あるいは想像していることだろう。
もちろん、作者の足元には遠く及ばないのだが。

翻訳者のアンソロジーだった『聖母の贈り物』と比較すると
皮肉っぽい文章は鳴りをひそめ、冷静な観察者としての
作者が浮かび上がってくる。こちらのほうが押し付けがましくない。
でも、じぶんの秘密には不安が残る。
トレヴァーには、もう知られているかも知れない。 
奥行きと深み ★★★★★
クレストブックの存在によって、マクラウドやアリス・マンロー、エリザベス・ギルバートの手による素晴らしい短編作品に触れることができました。それら一つ一つが、読んでいた時の季節や情景・実生活の記憶とともに、深い部分に残り続けていくように思います。一つの人生において、音楽や文章とのめぐり逢いは、人とのそれと同じように重要な意味をもった機会なのではないでしょうか。「ここに素晴らしい作品があります」、結局僕が伝えたいのはただそれだけです。ぜひこの短編集を手にしてみて下さい。決して派手な感動は呼び起こされなくとも、書き手のみならず素晴らしい翻訳により成立した稀有な一冊がここに在ります。
胸中に燻る激情を抑えて、ささやかな幸せを噛み締める人々の物語。 ★★★★☆
アイルランド生まれで英国デヴォン州に暮らす英文学界の重鎮トレヴァーが2004年に発表した心に深く染み入る12編を収めた円熟の短編集です。著者は1928年生れで本書は76歳の時に執筆された作品であり、その後2007年にも短編集が出ているという事で、その健筆振りには本当に驚かされます。本書に収められた12編の多くは、思うようには行かない苦い人生の中で、それでもそれが必ずしも不幸だとは限らない事に気づいた男女が、ささやかな安らぎと幸せを感じる一瞬の心模様を切り取った物語になっています。『死者とともに』では、粗暴だった夫が急に亡くなった夜偶然に訪ねて来た客に思わず生前の夫への不満を吐露して心の平安を得る老妻を、『夜の外出』では、初対面のお見合いデートで互いに相手の嫌な本性を見抜きながら、険悪にならずに割り切って潔さに感謝しつつ別れて行く男女の心の高揚感を、『ダンス教師の音楽』では、お屋敷の召使として一生を送り晩年を迎えた女性の人生に常に寄り添ってきた心に鳴り響く奇跡のような音楽の調べが描かれています。私が読んで最も心に残った2編を紹介します。『孤独』:幼い頃に母の浮気相手を誤まって殺してしまった少女の心を労わりながら、放浪の旅に出て3人で生涯を過ごした両親との人生を描きます。少女が老いて独りになった時、彼女の心中に賢い老紳士が現れ両親の抱えていた真実を教えてくれます。『密会』:不倫関係の中年男女が幾度も密会を重ねるが、やがて倦み疲れ未来に訪れるであろう不幸を恐れて別れて行く。愛は壊される事なく激情に流されず穏やかに暫し思い出を胸にとどめながら。
本書に描かれる世界は静謐且つ穏やかその物で少し古めかしい印象もあって、現代社会の息吹が感じられず動きが少ない物足りなさも多少はあります。けれど、やはり普遍的な人生の真実を数多く含んだ深い感動を味わわせてくれる小説世界は、今の世の中に於いては誠に貴重でかけがえのない物だと思います。
クレストブックスらしい、さすがトレヴァーという作品 ★★★★★
上質で、小説の楽しみを詰め込んだ本を出すクレストブックスシリーズ。
そんなシリーズの精神にぴったりな一冊でした。
フールズオブフォーチュンなど、しっかりとした名作で知られるトレヴァーですが、今回もいい仕事をしています。

短編集で、一つ一つがネックレスのようにつながって,一本の作品になっている感じです。
どちらかというと、暗くて哀しいストーリーが多いですが、困難な人生の中で、人の強さが際立ちます。
トレヴァーの人を愛する気持ち、困難な人生を生延びて行く人たちへの暖かい想いが伝わってきて、読んだ後澄んだ気持ちになれます。
こういう、なんでもない、敗者のにおいのする人生を取り上げて丁寧に描く辺り、トレヴァーの真骨頂なのかもしれません。