あたたかな人間味を感じる読売新聞の名コラム
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「ああ、この頃はこういう事件が起こったんだなあ」「この時って、こういう問題が世間を賑わしていたのか」といった感慨に耽りながら、さくさくと名文を読んでいく楽しみ、面白味。家では朝日新聞をとっているのですが、最近、読売新聞一面のコラム「編集手帳」が面白いことに気がつき、わざわざそれ読みたさに、コンビニで読売新聞を買っていることもあり。不定期だけれど。ま、それくらい読みごたえあるんだな、読売新聞一面コラムの「編集手帳」は。
毎度、ネタに合わせて筆者が持ってくる詩や俳句、川柳、歌、誰かが言った言葉などを読むと、筆者が実に多くの書を読み、またそれをよく整理して記憶の引き出しに入れていること、そして的確にその記憶や知識を持ち出してくることに半ばあきれ、ほとほと感心させられてしまうのです。
2008年現在はおよそ460字ほどの字数でまとめなければならない文章も、2007年1月から6月掲載分のコラムを収めた本書では、まだ540字くらいの容量(?)があったんですね。字も大きく、行間も広くとってあるので、ゆったりした心持ちで読んでいくことができます。
収録されたコラムのなかでは、大リーガーを志して渡米し、ついに夢の舞台に立ったプロ野球の桑田真澄投手のことを取り上げた二本、「樹液の涙」「美しい水」が忘れがたい味がありましたね。俳句の飯田龍太、作家の城山三郎、財界人の平岩外四といった人が亡くなったことに触れた「飯田龍太さん逝く」「流浪の旅人」「平岩さんのこと」も、いい。マイ・ベストは、でも、「春の聖火」かな。2007年2月9日掲載のコラム。受験生諸君と彼らの親に向けて、エールを送ったコラム。心のこもった達意の名文です。