生命誕生の神秘に迫る
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「対称」という概念の説明に始まって,生命誕生の神秘に迫る非常に奥の深い1冊です.
「対称」というと学校で習ったのは線対称と点対称くらいで,それ以外の「対称」があるという事は全く考えてもみませんでした.しかし少し概念を広げてみると,その他にもいろいろな対称があるとのことです.例えば,「回映」という対称操作は初めて知りました.
本書では,まずこの「対称」という概念の説明から始まります.そして,動植物を対称という観点から見るとどうであるかという話になります.分かりやすいのは動物の話で,概ね左右対称ですね.しかし,この外見に反して,動植物を構成している分子レベルでは全くの非対称であるようです.非対称ということは,右手型の分子と左手型の分子があるということです.そして,この片方が選ばれているわけですが,生命誕生の過程でどのようにして片方の型が選ばれたかという議論は非常に興味深いものでした.
後半の化学式の出てくるところは素人には若干敷居が高いですが,その部分をすっ飛ばしても著者の言いたいことはよく分かります.サイエンスの好きな方にはお勧めです.