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ささやく河―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)

価格: ¥700
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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過去に挑む伊之助 ★★★★☆
伊之助シリーズの3作目である。島帰りの男が殺された事件を探索するために、伊之助は過去へ、過去へとさかのぼっていく。そしてたどりついた結末は、とても胸をうつものであった。人間は忘れたいようでいて、決して忘れ得ぬ過去があり、そして一生それを背負っていかなければならない、そんなことを胸に刻まれた。
本当に凄い人は、巨石を小石の様に持ち上げるので、その凄さが理解されない ★★★★☆
藤沢周平は学生時代に詩を作っていたからなのか、非常に洗練された文章を書く。

例えば、かぎ括弧つきの台詞は文章の展開上やむを得ない場合を除いて必ず行の頭から始まり、かぎ括弧つきの台詞のあとに文章が続く事もない。「ささやく河」も例外ではない。
しかし「ささやく河」の中に、かぎ括弧つきのせりふの後に文章が続く箇所が一つだけある。
ミスではない。伏線を張っているのだ。

藤沢は、技巧派の作家ではない。しかし文章に関しては技巧派である。

藤沢版人気ハードボイルドの第3作です ★★★★☆
元凄腕の岡っ引伊之助を主人公とする藤沢版人気ハードボイルドシリーズの第3作です。物語の冒頭を引用すると「いわくありげな男2人が登場。その片割れである島帰りの男が殺され、今では商人に治まっているもう一方の男が怪しいのでは?」といった手がかりを読者は与えられ、一体誰が殺したのか、伊之助と一緒に謎解きに加わっている気にさせられます。これは海外のミステリーにもよく見られるパターンですが、さすが海外ミステリー好きでもあった藤沢周平と思わされます。
このように、当シリーズは、サスペンス性に重点を置いたストーリー仕立てにはなっていますが、同心や岡っ引、また、彫師仲間とのやりとりなど、著者独特の市井の描写も他の藤沢本と同様であり、一挙に読ませる面白さを持ったシリーズの最終巻です。
家族の幸せ ★★★★☆
伊之助とおまさの仲は相変わらずである。しかし伊之助の心の中では「形だけでも…ちゃんとしたほうがいいかな」などと思うようになっている。そんな中、連続殺人事件が起きる。伊之助はまた仕方なく石塚同心の探索を助けるようになる。

最後のほうになって事件の本質が見えてくる構成は、まるで昨今の推理小説を読んでいるようである。事件の裏に見える、本当の家族の幸せとは、という問いかけ。押し込み強盗の過去に絡んだ殺人事件に見えながら、これもやはり男と女の物語であった。夏の盛りに物語は始まり、晩秋に終わる。