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死は共鳴する―脳死・臓器移植の深みへ

価格: ¥3,150
カテゴリ: 単行本
ブランド: 勁草書房
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 「臓器移植法」施行前の段階で上梓された、脳死・臓器移植批判の書。情勢論をはるかに超える「死」についての考察が展開されている。脳死問題が、推進か反対かという単純な二分法で進みがちな流れの中にあって、本書が提起する視点は、時を超えた本質的なものを含んでおり、施行後の現在も何らその価値を失っていない。「脳死問題」に含む陥穽(かんせい)を明るみに出す本として、ぜひ一読を勧めたい。

   本書の貫く主要なモチーフは2点ある。1つは、「脳死」の論議が「死の医学化」という近代的な現象の延長で行われていることに対する警鐘の意識。もう1つは、生理学的な認識を基礎にした「個人閉塞する死」という認識に対する、実感的な批判である。 

   死は個人のものではないと著者は言う。家族や近くの人々にとって、故人の死は生理学な死と共に訪れるのではなく、思い出を想起したり、ふと感じる不在の感覚といった経験を繰り返しながら、時間をかけてやってくるというのだ。つまり、みとる者とみとられる者との関係の中にこそ死の実体はあり、そうである以上、これと独立した「故人閉塞した(生理学的な)死」の判定に基づいた脳死など、根本から認められないというわけだ。

   基本的な観点から離れずに、あくまで丁寧な考察を進める著者の手つきは、誠実で見事なものだ。推進であれ反対であれ、政治的な立場を超えて、多くの人に手にとっていただきたい。(今野哲男)