“早世”と“天才”を並べるのは少しばかりしつこいが・・・
★★★☆☆
確かに、個性的で見どころのある画家12人についての評論・エッセーである。
こう並べられると、その画業の卓越性とその早世さに驚かされる。萬鉄五郎・村山槐多・関根正二については読みごたえを感じた。
絵を見ることが好きな人、なかでも日本近代洋画にも目を向けてみようとする人には新書という体裁の中で、読み得な本と思われる。各地の美術館の企画展・常設展をより身近にする一助となると評価できる。
但し書きとして書き加えると、“まえがき”で著者自身も触れているように、さまざまな媒体で発表されて評論を緩やかな共通性の中でまとめたものであるため、統一的な体裁・視点を欠くこと、悪く言えば独りよがりの情緒的な表現・文章がところどころに顔を出すことなど、読み物としてはキズも多く、一冊の本としての完成度は低い。
本としての完成度よりも、ガイドブックとして、実際に12人に画家の絵を見ることと読み返すことのやりとりをするのが最良の読み方かもしれない。