今年の一押し海外ミステリー
★★★★★
とにかく頁を速く捲りたい要望にかられた久々の1作。親友を殺ろした罪で殺人容疑をかけられた罪なき主人公が、真犯人に復讐するといった単純なストーリーながら、法廷での弁護士、検察官の駆け引き、独房内の描写、800頁を超える大作とは感じさせない見事なストーリーテラーぶり、そして主人公初め、印象的な登場人物等、読みどころは十分。事件に巻き込まれた主人公が、物語が進むにつれ、それをサポートする弁護士共々成長していく過程の描写は本当に見事であり、作家は当然ながら翻訳家である永井敦氏の素晴らしい仕事と賞賛したい。海外小説として最も大事なものの一つである作者と翻訳家の相性は抜群であり、人間の矜持、そして人間の誇りとは何かを感じさせてくれる素晴らしい作品と思う。本作における法廷、刑務所の印象的な場面の数々は、JAの経歴なきには書ききれない、通常のリーガル物とは一線を画した作品である。
十分なエンターテインメント
★★★★☆
結構な”ありえない”話を、場面転換の速さと、原題”Prisoner of Birth" 因習の虜という
主題がしっくり納得できる、出自の異なる2人の男の人生、思考を交互に披露して、
私のページをめくる手を止めさせてくれなかった。
一瞬 男性版”マイ・フェアー・レディー"か?とつこめたり、アルが囚人でありながら、あれ程の善人で
よかったなぁ、と安堵したり、と読み手をのめり込ませてくれる。最低1週間は楽しむ
積もりが3日で読み飛ばしてしまって後悔しています。
ただ、あれ程のやり手で、生まれもよく、学歴最高、地位もあり前途も洋々の<4銃士隊>の
隊長(?)が弾みとはいえ、一時の感情の高まりから公共の場で人を刺し殺すか?
事件直後からアリバイ工作に奔走する頭の回転の速さで、話を読み進むほどにここが、
引っかかってしまった。
作者も、この辺りの矛盾をどう読者の目から逸らすか、苦慮したと思われ、
結局、すべての発端である、殺人の場面は詳しく描写しない事にしたと推測しています。
(マア、それほど後のストーリーに自信があったのでしょうし、そのとおり、結局
楽しんでしまいました。)
最後も”胸のすく”結末ではありましたが、私としては、いま少し犯人側の狼狽をエピローグ
として楽しみたかった。(偽証したバーマンさんはどうなった? ニック殺しは立証される
のか?)
あと、なんでバーテンを、バーマンと訳したんでしょうか?翻訳物を読むときには
人物関係を十分把握するために、50Page位を丹念に読むことにしているのですが、バーマンを
人名と勘違いして、ちょっと混乱してしまいました。
面白かった
★★★★☆
相変わらず、最後までぐいぐい読ませる。
登場人物も皆魅力的。
ストーリーテラーの面目躍如といったところか。
ただ、主人公を助けるある重要人物の思考、行動に首をかしげたし、目立ちすぎる伏線のためにどんでん返しの意外性が損なわれている。
とはいえよくできた娯楽性の高い読み物で、値段分の値打ちは十分あると思う。
傑作です
★★★★★
スピード感のあるストーリー、脇役すら個性的で活き活きとした人物描写。出獄後の作品では衰えを感じずにはいられなかったアーチャーですが、本作品で希代のストーリーテラーぶりを遺憾なく発揮しています。傑作です。
上巻では主人公が幸せの絶頂から奈落の底まで突き落とされます。どうやってプリズンブレイクするのか。その手法に驚かされることでしょう。
刑務所の描写は解説者が言うようにまさに「転んでもタダでは起きない」。自身の経験を元にした情景が浮かび上がる見事な表現を実現しています。
アーチャー節健在!
★★★★★
アーチャー、久しぶりの長編です。「百万ドルを取り返せ」を彷彿とさせる興奮と「プリズン・ストーリー」で感じたアーチャーその人の人生の深みが味わえます。最初から最後まで一気に読めました。ストーリー展開は、アーチャー独特の偶然と矛盾に満ちていますが、違和感なく楽しめるのがこの人のすごいところ。今から次の長編が楽しみです。