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ダーウィンの思想―人間と動物のあいだ (岩波新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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ダーウィンの進化論 ★★★☆☆
ダーウィンの調査と研究を紹介しつつ、進化論の原理「自然淘汰」
「分岐の原理」について解説され、また、人間の道徳と進化の関連
についてダーウィンがどのような立場に立っていたのか述べられて
いる。
進化に関する研究をまとめるというよりも、ダーウィンの進化論を
忠実に理解するための解説書という印象である。そのため、遺伝学
との総合からネオ・ダーウィニズムの話にはまったく踏み込むこと
はしていない。そのため、血縁淘汰(包括適応度)とか中立性仮説
とか進化学に関する文献でよく取りあげられる議論はないが、逆に
読みやすいものになっている。

人間の道徳的性格をダーウィンが進化の側面から理解しようとした
のに対して、哲学者ミルは人間社会の洞察から導こうとした。そし
て、依るところは違えども互いの見解が非常に似通っていたという。
この著者の指摘は非常に面白かった。
面白い試みだが、読みづらい ★★☆☆☆
本書の主要なテーマは2つある。

1つは、サブタイトルにもなっている、
「人間と動物の連続性」である。
進歩説にしろ、転成説にしろ、
単純で下等な生物から高等な生物への連続的変化を唱える説は、
ライエル初め、当時多くの研究者が反対していた。

「動物界にはない、人間固有の理性や道徳性はどこから来るのか」
この問いを答えない限り、
人間と動物が連続的につながっているとはいえない。
ライエルはこう主張し、
自然界における人間の特別な地位を保持しようとした。

それに対して、
ダーウィンは次のように述べている。
「ミツバチの巣がミツバチの本能なしでは存続できないのと同様、
社会は道徳感覚がなければ存続しえない。」
人間固有と考えられてきた道徳性を、
何の抵抗もなく自然界に投げ戻し、
ほかの社会的動物と比較したのである。
そして自然主義に基づいたダーウィン独自の道徳論を展開していく。

このような自然主義的世界観は、
もう1つのテーマである、
「目的論的世界観の克服」にも大きく関係している。

知的創造者によって世界は設計されている。
これは、当時の一般的な考え方であった。
研究者たちの間でも、
「それぞれの器官は、
それ固有の目的のために設計され、機能するのだ」
というような目的論的見方が主流であった。

ダーウィンは自然淘汰説や分岐の原理を通して、
神のような設計者がいなくても、
生物の複雑な機能やデザインが生まれることを説明しようとした。
しかし神の配慮がない世界では、
自然界における人間の特別性が損なわれることになる。
ライエルを含めた多くの研究者が、
自然淘汰説と神の配慮をなんとか両立させ、
人間の尊厳を保持しようと試みた。

その意味では、
当時多くの人々が乗り越えられなかった壁を、
徹底した自然主義のもと、
ダーウィンはいとも簡単に乗り越えてしまったのである。
ここに彼の独自性とすごさがある。

以上が本書の核となる内容である。
しかし本書の構成では、
この2つのテーマが交錯しており、
「一体何のためにこの話をしているのだろう?」
とわからなくなることが多々あった。
おもむろに転成説や分岐の原理の説明をし始めても、
それを通して何が言いたいのかを述べなかったら、
本書の全体像が見えてこない。

さらには、
ダーウィンの伝記的エピソードや
色々な人物の説がまとまりのない形で出てくるので、
非常に読みづらい。

生物学者でもなく、ダーウィン研究者でもない、
哲学者としての視点が明示的に打ち出されていなかったのは
期待はずれであった。

扱っているテーマが面白いだけに残念である。
ダーウィンという人間、そしてその人生 ★★★☆☆
ダーウィンの思想、というタイトルだし、著者は哲学者なのだが、内容は意外とダーウィンという人間、そしてその人生に関わるものが多いような気がした。
個人的には、タイトルと著者を見ててっきり「進化論の哲学をコンパクトにまとめた本か」と思ったので正直意外であった。

思想についても、ダーウィンやその同時代の人物が考えた順番で紹介されていくので、進化論自体を知りたい人よりも、思想遍歴やダーウィンの思想的葛藤などを読んで楽しみたい人が本書を読むべきだと思った。

ダーウィンの思想の切り出し方も、進化論というよりも、最初と最後で「道徳」の話を出し、人間と動物、道徳というものを(進化的に)いかに位置づけるか、という問題を中心に据えている。
どちらかといえば社会進化論なので、正当な進化論をイメージしているとやや肩透かしをくらわされる。
もちろん、ダーウィンのころから社会進化論への視座があったのか、ということを知りたい人にはおススメである。

進化論の思想そのものを知りたい人は、エリオット・ソーバー進化論の射程―生物学の哲学入門 (現代哲学への招待Great Works)を読むほうがいいだろう。
キリスト教的な道徳観を乗り越えたダーウィン ★★★★☆
ダーウィンの進化論といえば、誰もが知るような有名なものであるが、実はその内容が広く理解されているわけではないようだ。
かねてより「種の起源」を読んでみたいと考えていたが、どうも非常に難解であると聞き、何かちょうど良い入門書はないものか
というときに見つけたのが本書だ。
著者が科学「哲学者」ということとタイトルの「思想」と言うところから、科学的・専門的な内容というよりも感覚的に読めるの
ではないかと思った次第である。

事実、ダーウィンの思想的な変遷や新たな考え方が生まれるきっかけについて非常にわかりやすく書かれている。
ライエルやウォレスらの影響しあい、磨きあえる研究者がいたこと、種の起源の元ネタとなる「スケッチ」や「エッセイ」の存在、
ダーウィンフィンチや蘭を中心とした種の分化の研究、当時の道徳観を超えて人間の進化とそれを取り巻くライバルたちの発表
が描かれている。
そして、最終章では神がすべてをデザインしたとするキリスト教文化の中で、特に人間が道徳を持つことは特別とされてきたが、
その道徳さえも人間の進化において社会性を求められるという必要性から形作られたものであるという最終的なダーウィンの結論
が他の学者の実験結果で細くしながらわかりやすく書かれている。

生物の進化だけでなく、キリスト教的な考え方に対するアンチテーゼという思想的な部分もたぶんに描かれておりどちらに興味を
もつ方にもお勧めできる一冊である。
ダーウインの思想 ★★★☆☆
正直な話、いささか思惑の外でした。
小生の思い込みが一方すぎたのかと自省いたしております。
御社にて本を求める際、内容の一部だけでも見ることができればな、と思います。
やはり本屋にて「パラパラ」とペイジをめくり納得して購入すべきと改めて思う
ことでした。