味のある短編
★★★★☆
藤沢周平晩年の短編3つ。
「岡安家の犬」は、岡安家で可愛がられている飼い犬アカをきっかけに甚之丞が野地金之助と仲たがいをして…という話。
「静かな木」は、老境の布施孫左衛門が、息子・邦之助のために一肌脱ぎながら、かつて自分も巻き込まれた過去の事件を暴こうとする物語。
一番藤沢周平らしい、まっすぐで素朴な主人公が出てくる話で、短編ながら長編1冊を読んだような充実感がありました。
「偉丈夫」は、伝承のこぼれ話を短編にしたような作品で短編としてよくまとまっているユーモアのある作品でした。
短いですが、味のある短編集です。
そうか、「最後の短篇」かー
★★★★★
著者は69歳で亡くなったが、最後の長編は私の好きな竹俣当綱の「漆の実のみのる国」。そして短篇は、この中に収録の「最後の短篇」と銘打たれた作品「偉丈夫」。
短篇3編
・「岡安家の犬」:h5年 週刊新潮発表
・ 「静かな木」:h6年 小説新潮
・ 「偉丈夫」:h8年 小説新潮
この著者の数ある文庫の中で、一番薄く、一番安い文庫本。
その理由から読むのを長年躊躇っていた。
そして、まさかこの中の「偉丈夫」が最後の短篇であったとは知らずにいた。
しかし、中身は素晴らしい。文学は原稿の枚数ではない。たかだか50ページの短篇でも、さらに「偉丈夫」など12頁しかない。それでも内容が濃くしっかり感動させられる。素晴らしい本であった。
あらためて、「そうか、これが藤沢周平さん最後の短篇かー、感慨深いな」
晩年の傑作短編集
★★★★★
作者が亡くなる前の4年間に書いた短編小説3編をおさめる。
「偉丈夫」は、藤沢周平の最後の短編。小心者の大男が、藩の命運を背負って交渉に挑む。
なぜ、小心者の大男が選ばれたのか?そしてその首尾は? ユーモアと人生の真実にあふれた
一編。
表題作の「静かな木」は、老武士の義と矜持と意地と家名をかけた大一番の物語。内容的に
は十分長編小説となり得る物語だが、わずか60枚の短編に凝縮されているのは驚き。まちが
いなく、藤沢周平の短編ベスト5に入るべき絶品。
「岡安家の犬」は情感あふれる佳品だが・・・愛犬家は読まないほうが良い(笑)。
薄い中に詰まっている
★★★★☆
大きな字で、120ページくらいの本ですから、すぐ読めてしまいます。
とは言え、決して薄っぺらな本ではないですね。
3つの短編が収められていますが、いずれも、私の好きな藤沢周平要素!である、剣劇、美しい嫁(あるいは女性)、藩の政治による心あるものの人生の翻弄、がそろっています。
生きることに不器用なしかし誠実な人物、老いてなお心に熱く燃えるものを(じっと)抱いているもの。。。あぁ、こういう人物を、藤沢周平は実にうまく描くなぁ。
解説は名文
★★★★☆
私のいいたいことは解説の立川談志師匠が言い尽している。特に「私は未読の藤沢作品を数冊残している。すべて読んだあとの淋しさを考えてのことである。」というところなど、全く同じ。ぜひこの解説読んでいただきたい。文庫版ながら、文字を一回り大きくして老年に入った人も読みやすくしてある。文字を大きくすると、なぜか一つ一つの文字使いに感動する。練りに練られた名文、であるかのような隙の無い文章ではある。