一気読みでした
★★★★★
森達也の「職業欄はエスパー」です。3人の「超能力」を持つ人々の、ある時点の「人生」を写すドキュメンタリーを撮った作者の自作ルポです。いわゆる「超能力」を持つといわれる人々の波乱万丈の人生を様々な場面を通して我々に作者は提示する。でもその波乱万丈の元になる「超能力」という「異能」な才を持つ彼らは果たして本物なのか?という疑問がいつも付きまとうため、我々読者の視座は、時に乱されてしまう。彼らは本物なのか。作者は本物であるような証拠を提示する場合もあるが、信じていない側面も多くある。これまでにその能力をかなりの場面で見せつけられた作者でさえ、最終決断を保留する。
不思議な書である。私は作者のドキュメンタリーを見ていることで、その作品から彼を信用しているが、それでも本作からは、「どっちなんだ」とはっきりしたことは断言できない。でも彼らのある種の「能力」がお金を生み出すことは事実である。その事実と「本当の真実」の間に問題がある。だからいかがわしくなるのである。利用された感じがして、胡散臭いのである。でも本当かもしれない。果たしてどちらであろう。
その答えは現在の「超能力」に対する我々の心が変わらなければ見つからないのかも知れない。
徹底的に主役は森氏
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今回は、森君が(自称)超能力者を取材するよ。
超能力って本当にあるのかなあ。
森君の悩み、迷いを
相変わらず見事な文章で楽しんでね!
…って本です。
「超能力は無いぞ!」とか「超能力は確かにあるぞ!」とか
解りやすく結論を出す本ではありませんので、ご注意を。
しかし読ませる。面白い。見事。
超能力を題材に、問われるのは「メディア」そのものだ
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奇術師ですら手品でないと言い切るような、
現行の物理学では解明できない現象が、
たとえ目の前で起きても、時には故意の
時には偶然の発言が、「事実を遠ざける」
ことが、鮮明に語られます。
これは超能力を題材にマスメディアの裏側に
メスを入れました。超能力の有無、信じる信じない
ではない視点で書き上げられたドキュメントは
知的に仕上がっています。メディアがどんなものか
一般教養として読まれることをお勧めします。
そのうえでどんなに文明が進もうが、科学が発展
しようが、これは永遠なる迷宮なんだと
感じました。淡々とした構成に魅了されます。
内容は面白いが・・・著者の人間性に???
★★★★☆
秋山氏、清田氏、堤氏の「超能力」の業界で一世を風靡した3人の能力者にフォーカスしたノンフィクション作品ですが、主役は著者だと思いました。いつの時代でも「信じる、信じない」で議論される超能力を題材に、超能力者のプライベートを著者独特のジャーナリズムポリシーを貫きながら展開する文面自体は、とても面白いものでした。ただ、著者のポリシーに基づく言動については、読んでいて、違和感というか不快感に近いものを抱いたのも事実です。いかに取材とはいえ、こんな態度で人様に接するのは如何なものかと(能力者の感情を逆撫でするような言動がしばしば出てきました)。世の中に著者ご自身の考えを知らしめたいがための言動とは思いませんが、ただでさえ社会的に奇異な目で見られることが多い能力者の心情を察すると、読み終えた後、何ともいえない虚しい気分が残りました。
エスパーを鍵に考える
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3人のエスパーを中心にさまざまな角度から説明不可能な事象について考察をすすめる本。 森達也さんはあくまで、自分の感情に忠実に、現象の考察をすすめている。そっけない超能力否定派には、むきになって目の前で起きている説明困難な現象をつきつけようとし、超能力によってもたらされたと考えられる可能性のある事象については、ありとあらゆる否定的な視点をもって対峙しようとする。
しかし、この本は超常現象について、その有無にだけ焦点をあてているわけではない。エスパーといわれる極少数の人達を通して、メディアの本質に迫り、ひいては私たち読者にメディアによって流される「事実」というものの見方についてのヒントを示してくれている。
続編をつよく望みたい。