それでも『誰もが長生きしたいなんて大うそ』と言う言葉の意味は、親しかった作家達に先立たれて何度も
スピーチをするよりも、自分も早く死にたいと言う意味だと感じ、自分をマンボウ氏の立場に置き換えてみれば
わからないでもない心情だと考えさせられた。
この本全般が、とりとめがない老人の昔話と言う感じになっているのだが、そこを『解説』を書かれた三浦朱門氏が
キリッと締めているのがうれしい。その解説の中で、今は亡き遠藤周作氏が北杜夫氏はレトリバーに似ていると語ったとあるが、
盲導犬が乗り物に同乗して、身をかがめ目をあけたり閉じたりしている様子が目に浮かんで、ついクスっと笑ってしまった。