本作には大変めずらしい作品が収録されているが、中でも注目したいのは、後にアメリカ海兵隊の歌となったオッフェンバックの曲と、悠然とした風格が圧倒的なフェリックス・ブリューメンフェルドによる左手のための習作だろう。また、秀逸なジョークも出てくる。その一例と言えるのが、アムラン自身の作によるスカルラッティへのオマージュ。いかにもスカルラッティが使いそうな技法を総動員しながら、結果的に似て非なる性格を持たせたという意地の悪い作品だ。
またとてつもなく美しい曲も用意されている。モスコフスキーの「ショパン風エチュード 変イ長調」や、ヨーゼフ・ホフマンの「万華鏡」作品40の4がそうだ。特に後者は珠玉のような美しい楽節を持ち、圧倒的な印象を残す。聴く者を魅了してやまない本作は、どの曲を取っても才気と魅力を感じさせる。笑顔で聴ける1枚だ。(Michael Church, Amazon.co.uk)