人生の供にモンテーニュを
★★★★★
1,2巻と読んできて、3巻目です。この道程を経て、気がつくと、これでモン様ともしばしお別れかと思うと寂しくなってしまう位この作品を愛するようになっていました。いや、読み返せばまた出会えるのですけどね。そこが本のいいところですよね。でも片付けると寂しいので、いつも3冊ともすぐ目に付く位置においています(どんだけ・笑)。
3巻目のサブタイトルは「社会と世界」。「孤独について」等、モンテーニュの社会との関わり方、人との関わり方が多く語られます。『エセー』全体を貫く、物事に対するときのバランス感覚の大切さ、節度を持つ大切さ、いわゆる通常人の持つ「常識」的感覚の大切さを強調する姿勢が、この巻にも流れています。そして、ドフトエフスキーが「まったく人間の心は広い、広すぎるくらいだ」と言っていたことを思い起こすような、「人間」という存在の究めつくしがたさ―多様さ、複雑さ、変化の激しさ―についても。
社会も、世界も、人間も、変化して当たり前。その波激しき海原を、われわれは何とか航海していかなければならない。高く襲い来る容赦なき宿命の波頭に飲まれそうになったとき、多難で激動であった時代を賢明に徳高く生き抜いたこのフランス人の知恵の光は、確かにわれわれの航路の助けとなってくれます。
私は死のその時まで、傍らのモンテーニュと共に海をゆくことでしょう。ロランやユゴー等多くのフランス人文豪たちに加えて、心強い道連れがまた一人増えたことを、心から嬉しく思います。