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二百年の子供 (中公文庫)

価格: ¥680
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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   ノーベル文学賞受賞作家大江健三郎といえば、読者に高度な解読のレベルを求める構築性の高い作品の作者というイメージが付きまとうが、大江自身、「私の唯一のファンタジー」と述べている『二百年の子供』は、大江作品には珍しく子どもから大人まで幅広い層に読まれうるジャンル的特性を備えた作品である。

   物語の主人公は、小説家を父にもつ3人のきょうだい。養護学校に通う長男で18歳の真木は音楽に並々ならぬ才能を発揮し、中学2年生の長女あかりはそんな兄を大切に思い、中学1年生の朔は抜群の行動力と思考力で兄と姉をサポートする。彼ら「三人組」は、父の生まれ故郷の四国の森に伝わる「童子」と呼ばれる特別な子どもが、地元の人が「千年スダジイ」と呼ぶシイの木のうろの中に入って行きたい場所をねがいながら眠ると、その場所に行くことができるという言い伝えを耳にする。彼らは夏休みのあいだ「森の家」に滞在し、父の友人であるムー小父さんの助けを得て、去年亡くなった祖母に会いに行くためにうろの中で眠る。

 「三人組」は真木と心通わせる柴犬の「ベーコン」に導かれながら、120年前に村の危機を救ったメイスケさんや、103年前のアメリカで生活する日本初の女子留学生に会いに行く。旅の最後に「三人組」が選んだのは、2064年の未来。そこで彼らは驚くべき光景を目にすることになる。

   1864年から2064年の200年の時空を行き来する「三人組」の行動を通して描かれるのは、過去と未来を規定する「いま・ここ」の重要性だ。過去はいまにつながり、未来はいまに溶け込んでいる。過去、現在、未来というひと続きの歴史的連続性の中に、想像力を駆使して積極的に自身を位置づけてみること。そこから、個人と歴史の新しい関係がかたちづくられる。大江はそのような人間を、若い世代への呼びかけと期待を込めて「新しい人」と定義する。自由な精神で「未来」につながろうとする子どもたちをめぐる物語は、和解と共存に根ざした新しい歴史認識を読者にもたらすことになるだろう。

   ファンタジーと銘打たれてはいるが、これまで大江が発表してきた作品群の中で提示された固有名やプロットが随所に織りこまれている。その意味で、大江文学のエッセンスとして読むことができる作品でもある。(榎本正樹)

もう一冊だけ大江健三郎 ★★☆☆☆
すっかりぼくには理解不能になった作家,大江健三郎。
もう一冊だけ読んでみようと購入した

ぼくは置いていかれる。
何の断りもなく変る情景。
なぜ、こんな、展開で会話が進むのか。
今は何を話しているのか。
何が言いたくて,このエピソードは必要なのか。

意味を追っていかないと理解できない年寄りの、
いや、ぼくの脳では,何を楽しめばいいのか、
どこをファンタジイと思えばいいのか、
ちっともわからなくなってしまいました。
現代が必要とする一冊 ★★★★★
子供が失われる時代に――勿論、大人も同じ――、子供を通して私たちに訴えかける
一冊です。

今、絶対に失ってはならないもの――想像力、歴史認識、そして現在――に気付かさ
れます。それが果たして何なのか、壮大な世界が語ってくれます。

本書とともに、ダニエル・ペナックの「こども諸君」も読まれることを薦めます。
大江・舟越両氏の労作(トラヴァーユ)! ★★★★★
 表紙に描かれた3人の子供の顔について、彫刻家・舟越桂さんは、次のように書いています。「このデッサンを描き終えた時私は、この物語を描いていけると思った。三人の顔を一枚の紙に描き、三人の心のようなものが現れていて、しかもそれぞれの顔が独立していると感じることができた。(三人の顔)」
 小説の原稿を確実に正面から考え挿画にする、挿画に触発されて、また原稿を書き直す。このように、大江作品で唯一のファンタジー・ノベル「二百年の子供」は、大江、舟越両氏の協働作品といえます。
 この小説をはじめて読む子供には、内容は分かりにくいかもしれませんが、「『夢を見る人』のタイムマシン」について大人と話し合いうことで、「想像力の勢い」を作り出すことが期待できます。
 フランスの大詩人・ヴァレリーの言葉が、最終章をきっちりと締めくくっています。
 
広汎な読者層を対象にした励ましの物語 ★★★★★
未来は現在がつくるから、未来は現在に溶け込んでいる。そしてわれわれの大事な仕事は未来をつくることだ。現在を生きることを通して。
暗い未来を予想したSFの名作が数多ある。本書に登場する未来は決して明るいものではないが、時代を貫く希望、信頼が底流に脈打っている。
伝説の木の洞で時代を120年前と80年後に旅することで人生の計画をはっきりしたものにする子供たち。その子供たちの物語を通じて、我々は次の世代の教育にどう向き合うのが良いのか、また現在どう生きることで未来をつくってゆくのが良いのかをを考えさせてくれる。
静かで自由な語り口で、励まされる物語。
明日への希望 ★★★★★
過去への冒険を重ねてきて最後に未来へ...とともにラストへ。ちょっと意外なところが唸らされるところ。 今、核についての論議がされ始めて不安の増した社会、教育への不信が言われている中でいかに「今を生きるか」の大きなヒントを得た気がした。