逃げないこと
★★★★★
高校生の頃から吉村先生の本を読み続けてきました。
しかし、この本は正直手が出ませんでした。
理由は20年前に亡くなった母に、同じく癌の病名を隠し続けたからです。
やっと読める気持ちになり、手に取りました。
誰かの「死」に責任を持つこと、逃げないことの辛さ、厳しさを思い出しました。
奥様に「あなたは私が癌になっても本当のことは言わないでしょう」というようなことを言われ、
「おまえには言うよ」と答える主人公。
多分、そうなっても言わないだろうとしか思えないです。
「死」と向き合ったことのある吉村先生だからこそ、「生」「死」から眼をそらさない
人間としての「強さ」「怖さ」を持っていたのだと思えてなりません。
私自身どこまでそこに近づけるのか、死ぬまで考え続けると思います。
こんなに辛い読書は初めて
★★★★★
癌で身内を亡くした人は、本書を読むのが辛いのではないか。
作者はおそらく苦しみながら書いたであろうし、読者もそうであろう。
それでも是非この本を読んで欲しい思う。
死生について考えさせられた。
なぜそこまでするのか?
★★★☆☆
「癌の告知は日本人の生死観にふさわしくない」
長年の取材経験から著者が得たひとつの結論。
癌に侵された実弟に対して、この信念を貫く著者である「私」
その「私(吉村昭)」を主人公とした実話に基づく作品である。
とは言ってみたが、生死観をテーマとしたとは受け取れない。
ひたすら癌であることを隠し通す「私」の執念と、
真実を告げられないまま癌の激痛に喘ぐ弟との異様な距離感に圧倒される。
そこまでしなくてはならない吉村氏の信念とは…。今後の課題です。
吉村さんが遺してくれたもの
★★★★★
最近は、初版で3万部も売り切れば早速‘ベストセラー’の惹句が踊る。
また、1ヶ月足らずで100万部を突破する‘オバケ’もある。
安っぽい話題性と売り手側の仕掛けに乗せられて、
普段本を手にしない人びとが一斉に書店に群がる。そしてまた、本を読まなくなる。
そんなことの繰り返しでも、毎日毎日新刊が書店に並ぶ・・。
そのような一過性の流れに、吉村昭さんの著作だけは晒して欲しくないと切に願う。
本著を始め、吉村さんが緻密に、丁寧に、年月をかけて入魂した作品の数々を読みきってしまうのは惜しい。
この本も惜しみながら読んだが、それでも片時も離すことが出来ずに1日で読んでしまった。
読了まで、我が身も疼いた。弟さんと氏の痛苦が乗り移ったのかもしれない。
氏の亡き後、何を読めばいいのか・・・。
冷い夏、熱い夏
★★★★☆
毎日文学賞を受賞したこの冷い夏、熱い夏は、壮絶な癌との戦いを見守ってきた兄、作者が、克明にドキュメンタリータッチで書かれた作品でした。私の兄もこの病気に苦しみながら家族愛の中で永眠し、
なにかとオーバーラップさせられ、心苦しくなりましたが、感動的な作品に出会いました。