小説に描かれた「穴掘り公爵」ことウィリアム・ジョン・キャヴェンディッシュ=ベンティンク=スコットはポートランド公爵であり、イングランドはノッティンガムシャーに居城を持つ、たいへん風変わりな人物である。実在した公爵であり(1800-1879年)、その奇行についてもよく知られていた。史実によれば、公爵は8本のトンネルを領地内に設置させる依頼をしたらしい。現在も領地内を歩けば直径2フィート(約60センチ)、厚み4インチ(約10センチ)の明かり取りが見つかる。しかしなぜ、公爵はトンネルを掘ったのか?
公爵は人生最後の数日間で奇行が急速に進行し、それが異常なまでに発展した。読者には公爵の奇妙な世界観が、幼いころの悲しいできごとによって作られたものだとわかるのだが、真相は最後の数ページに行き着くまで明かされない。
『The Underground Man』は、事実と虚構を混ぜ合わせてうまく仕上げているし、細かな部分まで興味をそそられる実在の人物を、想像力豊かに詳しく物語った作品である。