プレイガールでならしたモリー・レインが、謎の退行性の病気がもとで40代にして亡くなり、集まった多くの友人や恋人たちは自分もやがて死ぬ運命であることを自覚する。高級紙「ジャッジ」の編集長ヴァーノン・ハリデイは、有名にして放埓(ほうらつ)な作曲家クライヴ・リンリーを説得し、安楽死協定を結ぶ。万が一彼ら2人のうちどちらかがモリーのような病にかかったときには、もう1人が死なせてやる約束である。この先、読者は『Amsterdam』(邦題『アムステルダム』)の結末はどうなるか―― 要するに誰が誰を殺すかという問題―― を考えながら読み進むことになる。
やがてモリーの恋人のなかでも最も有名な男、外務大臣ジュリアン・ガーモニーのスキャンダラスな写真が新聞社の手に渡り、さまざまな憶測のなかでガーモニーには罷免の危機が迫る。しかしこの後がマキューアンらしいところで、どちらかといえば不愉快な印象を与えるキャラクターのガーモニーが勝利を収める展開も不思議ではない。
イアン・マキューアンは卓越した小説の技巧の持ち主で、この作品は賞を総なめにしてもおかしくない。しかも、登場人物は次から次へとめぐらされる策略のなかで、妙に無機的な雰囲気を漂わせ続ける。
衝撃的な結末
★★★★☆
単純な恋愛小説かと思いきや衝撃的な結末。それで、題名が「アムステルダム」なんだぁって最後に分かった。
この小説のヒロインは冒頭から死んでいて、その後もところどころエピソードは語られるけれど、不在のまま。しかし、彼女を中心に物語は進んでいく。不思議な小説だった。
マキューアンって文章は読みやすいんだけど、意表を突いてくる作家だ。
買いですが・・・。
★★★★☆
つい読んでしまいますが、個人的にどうしても好きになれないイアン・マキューアンです。イギリス的と言って片付けてよいのか、物事の輪郭だけをさらりとなぞったような、よく言えば精緻で贅肉を落とした、あの文体がどうしても体質的に受け付けません。タイトルや筋立てから、当の文体まで、その巧さを認めるにやぶさかではありませんが。それだけスタイリッシュなんでしょう。
さてさて、
★★★☆☆
マキューアンの作品なのだが、どうも初期の作品と比べたなら魅力がおちるような気がしてならない。死んだ女に対して三人の男ががやがやする小説なのだが、うーんどうだろう。訳者が未熟なのだろうか、首を捻りたくなるような日本語がたた出てきて、どうだろうと思うし、うーん、やっぱりセメントガーデンや最初の恋、などのほうが好みです
イギリスっぽさと、フィクショナルなクライマックス
★★★★☆
~イギリスの政治や、タブロイド新聞の世界など、ちょっぴりディープな大人の世界が展開されていって、魅力的だと思います。イギリスにある程度の期間住んでいて、高級紙だろうがタブロイドだろうが、ガンガン読み漁ったことのある経験を持つような人(そんなヤツいないか?)とにかくイギリス度の高い大人にオススメ。
私はIan~~ McEwan大好きですが、イギリスに行ったことがない、イギリス大嫌いという人(そんなヤツいるかな~?)には、読みづらい作家なのかもしれない。
物語は、亡くなった女の過去と、政治家のゴシップ(どんな醜聞かは、読んでのお楽しみ!)をテーマに、じっくりグダグダと進んでいきますが、最後のクライマックスは、スリリングで面白く読めます。McEwan上級者にな~~ると、このグダグタ感がたまらなくなってしまいます。アディクティブでございます。
このノンフィクション的な込み入った世界を構築する、緻密な筆づかいと、ビックリするようなフィクションの展開を、自在に使い分けるところがMcEwanの魅力です。
万人におすすめはできないかもしれませんが、一度ハマると、抜け出せません(笑)。~
大人の渋さ
★★★★★
原文が巧いのか、訳者が巧いのか、とにかく日本語がすっと馴染んでいる上に洗練された文体で大変読みやすい。
地位と名誉を手に入れた男たちの、更なる栄光への道はちょっとしたさじ加減で一気に転落の一途を辿る。
そのリアルで繊細な心理描写はほぼこの小説のすべてを占めていて、筆者の独り善がりにならずかなり読者を楽しませてくれる上に、
簡単なトリックを含ませた構成も効いている。
大人の渋い小説としてオススメです。