アメリカの「理念」と「保守思想」
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この本は、アメリカの保守思想家を紹介することで、アメリカの「保守思想」の歴史を解説した本です。
アメリカは「歴史のない国」とよく言われます。あるのは「建国の理念」だけだと。では、アメリカの保守思想家は、どこから生まれ、何を伝統とし、何と戦い、何を守ろうとしているのか、この本を読めば、よく理解できると思います。
それに加えて、この本を読めば、一口に「保守思想」と言っても、「伝統主義」「リバタリアニズム」「ネオコンサバティブ」などの違いがあるということも理解できると思います。
アメリカの二大政党について基本が見える一冊
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本書を特にお勧めしたいのはアメリカの政治の構造について知りたい人、そして、ネオコンについて知りたい人だ。日本では共和党と民主党の違いなど基本的な認識が欠落した新聞記事や論評が多いため、それを読んだ人がまた誤解を深めるという現象が続いている。
本書を読んでおけばそのようなわなにはまることはなくなる。
また、安部首相をネオコンと呼ぶなどネオコンというものをまったく理解しないまま「ネオコン」という単語を使うケースが多いように感じるが、ここまで丁寧にネオコンについてたどった、しかもわかりやすい本は和書では他にないだろう。
本書を読んで特に感じることは、常にアメリカの現象を説明しつつ日本の読者に語りかけている、ということだ。日本の政治はこの点どうだろう、という問いかけを感じる場面が多い。
日本の政界関係者にもぜひ、目を通してもらいたいものだ。
良書
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タイトルや著者の略歴を見てたかをくくっていましたが、なかなかどうして。
良い出来に仕上がっている。
数々の米の文献を読みこなし、米の保守についてかなりわかりやすく描いています。
経済についてもくわしいし、図表もあり、なかなか面白い。
ブッシュだけでなくレーガン政権についても2章があてられていることが特徴でしょうか。
かなりの学者が陰謀史観でアメリカを語る中、それとは違うおすすめの1冊です。
編集がだめ
★☆☆☆☆
アメリカの保守主義については、日本語では包括的に論じたものがそんなにないので、手軽で悪い本ではない。ただ見取り図が示せてもそれが分析には至っていないのは物足りない。
問題は編集。事実関係の誤認が散見されるし、「積極的に…を積極的におこなった」など日本語が変なところも結構あった。これは著者ではなくチェックする編集者の責任。粗製乱造気味で不愉快だった。
映し出された激動のドラマ。
★★★★☆
保守主義とは何か。ネオコンとは何か。その事を、時代を遡り考えて見たのが本書である。
本書に登場するが、バックリー曰く「保守主義思想を手際よく一言で定義するのはほとんど不可能である」との事である。それもそのはず、様々な場面・状況、そして時間を経たのならば、それは意味・価値もその時代によって変容されていくに違いないからである。ただ変容されていくからといって、それを無意味・無価値と決め込む事はできない。
本書はネオコンを強く否定的なニュアンスで書かれているわけではない。だからといって別に悪いものだとも思っていない。時代を遡り、保守主義とはネオコンとはと問うと、そこに見えてくるのは、アメリカという国家の中に胚胎した思想・政治を巡る激動のドラマだった。