著者が、環境情報系と総合政策系の学部の学生を相手に
講義してきた内容を踏まえ
政治学専攻の者にも、経済学専攻の者にも、
もちろん社会学が専攻の者にも、
あらゆる分野の者が読んでも、
わかりやすく、
また、彼らにとって有用になるようにまとめられている。
著者が富永社会学の全てと記述していたが
著者自身がそのように言っても
内容が十分にそれに対応していて
文句のつけようがない内容となっている。
私のような未熟者が言うのも変ではあるが
社会学専攻の方はもちろんでありますが
社会学専攻以外の方に強く推薦したいと思います。
この本は著者がみずから「富永社会学」と位置づける、著者自身の立場に立って、社会学、社会学理論、社会学史等を包括的に扱った一般読者向けの「ややハイレベルの社会学への案内である」。主著である『社会学原理』を「まったく新たな構想によって書きおろしたもので」、著者の主張をもっともよく反映している。
著者の主張は「構造-機能-変動理論」にある。構造は現状の記述概念。機能はその構造がなぜ現在のようにあるかを説明する説明概念。構造と機能とは相互に前提しあう関係概念。心と体との関係に似る。一方の概念を欠くと他方の概念も消滅する、相互的概念。「中心問題は、現状の構造がいまのままで維持されるかそれとも変動が生ずるかということであって、それをきめるのは、当該システムの能力が現状の構造のもとで環境の要求する機能的要件を充足するものであるか否か、ということである。社会システムの構造は、それが環境の要求する機能的要件を充足するときには現状のままに維持され得るが、機能的要件を充足し得ないとき!には、よりよく充足し得るような新しい構造を求めて、構造変動を生ずる」(p.333)。ただし有機体の構造変動は不可能、それは種の変化に通じるから。 現在の日本はこの構造変動が小泉内閣にあって可能であるか問われている。それはひとえに構造を構成している人々の行動如何にかかっている。