ジュエルのデビュー・アルバム『心のかけら』は、この類まれな声を強力に印象付ける一方で、独特なささやくように歌われる詩と魅力的なコーラス・ワークを中心に作り上げられている。アルバムは、また、若き詩人＝預言者から倦怠感に満ちた世界へ向けての啓示とでもいうかのような陳腐で紋切り型の青くさい（ジュエルの）感傷を残念ながら露呈させる結果にもなっている。
   大部分の曲でジュエルは自身のアコースティック・ギター伴奏を中心に歌っているのだが、彼女は樹ディー・コリンズやナンシー・グリフィスらの女性シンガーたちよりむしろ、インディゴ・ガールズやリサ・ローブといった存在に相通ずるものがある。ソフトなソプラノ・ヴォイスや口当たりのいいメロディーにもかかわらず、彼女の作る曲の数々は偶像破壊主義者的なエッジを感じさせるし、それがまた彼女をいわゆるフォーキーなシンガーソングライターというより、アーコースティック・スタイルのオルタナ・ロッカーたらしめているゆえんでもある。それにくわえ、極度に歌いづらい韻律、調子っぱずれなフレージング、日記調の断言の数々など、そもそも詩として書き下ろされていたという事実を疑いたくなるような要素が彼女の曲には多々ある。
   それでもなお、「モーニング・ソング」や「ユー・ワー・メント・フォー・ミー」など、何曲かではロマンスをめぐるユーモアの芽生えとジュエルが非凡な歌声の持ち主としてふさわしい楽曲を将来生み出す可能性を秘めていることを示唆してあまりある。(Geoffrey Himes, Amazon.com）