とても刺激的ないい本だと思いました
★★★★☆
日本酒の新しい潮流を捉えたあたりはとても素晴らしいものです。
今、歴史的に類を見ないほど日本酒の品質は上がっています。
その恩恵を受けているのが極く一部の人間だというのは残念なことです。
日本の食べ物には日本の酒が一番合います。
ワインもいいけれど、日本人なら日本酒も試して欲しいと思います。
で、この本はそういう総論的な部分は素晴らしいです。
ただ残念なのは、全国の酒蔵から推薦する蔵のピックアップをするときに、漏れが結構あるということですね。ネームバリューに幻惑されたのか、或いはお酒の好みに少し偏りがあるのかも知れません。もう少しいろんなお酒を試してみたり、今までに話を聞いた人たちと違う人たちからも情報を収集したら如何でしょう。
内容と紹介銘柄に乖離が
★★★☆☆
「口に近づけると、メロンや洋梨のような淡い果実の香りを感じ、口に含むと、ほのかな甘さが広がる。フレッシュでフルーティー。そして、舌の上に果実のようなさわやかな酸味が立ち上がり、なんの抵抗も無く、きれいに切れてスルリと喉に落ちてゆく」――本書の著者は、表題の「新世代日本酒」をこのように定義しました。
本書では、日本酒初心者にも美味しさがわかりやすい、この新世代日本酒を主軸に置くことで、日本酒関連書籍に多い純米酒の燗を理想とする視点とはまた違った、新たな視点を導入することに成功しています。(念のために付け加えておきますが、本書の内容に特定の主張を貶める記述はありませんし、またこのレビューも同じです)
「人生最初の一杯」の重要性や、美味しい酒との出会い方など、これから日本酒を飲んでみようと思っている方にとっては、なかなかに参考になるのではないでしょうか。
細かい間違い(日本酒度の定義など)や記述不足に感じる面もありますが、それらは内容の本筋とは余り関係ありませんので、さらりと読む分にはそれほど問題は無いと思います。
以上の内容であれば★×4の評価です。
ただ、問題は第6章にありました。
ここでは「新世代日本酒」「新世代日本酒と遜色のない注目の酒」として多くの銘柄が紹介されているのですが、明らかに上記「新世代日本酒」の定義にそぐわない銘柄が含まれています。
確かに紹介されている銘柄は人気も高く、今までに出版されてきた日本酒関連書籍等でも紹介されているような素晴らしい銘柄がほとんどです。
しかし、それだけではこの本の存在意義がありません。
そもそも上記のように新世代日本酒の定義を大仰に掲げているのですから、最低限そこに沿ったラインナップにするべきでした。
本書を読んで日本酒を飲んでみたくなった方が、新世代日本酒の定義から全く外れた銘柄を、新世代日本酒として飲んでしまったとしたら、どう感じるか――それぐらいのことも考えられなかったのでしょうか?
せめて「新世代日本酒の次に勧める酒」のようにカテゴリ分けをしていればまだマシだったと思うのですが。
もしこの本を読んで実際に飲んでみたくなったのであれば、紹介文の内容をよく読み、どれが新世代日本酒かを見極めて購入されることをお勧めします。
(第6章の評価★×1.5)(総合★×3)