「思考の整理学」とはちょっとイメージ違いますが面白いです
★★★★☆
「思考の整理学」がロングセラー中の筆者のエッセイ集。快書です。
・「長」と名のつくものには絶対つかない(自然と偉そうな態度が出てしまう)
・自著は知り合いには送らない(自慢しているように思える)
・病気見舞いには行かない(本当は相手に迷惑だと思われるから)
・自伝は自分や自分に近い者が書くものではない。むしろライヴァルの方が良いものを書く(近い者ほど実態がわからない。本人が一番わからない。フィクションをでっち上げるのが関の山)
著者の頑固で自分に正直な姿勢はいつもながら感心します。
私が一番驚いたのが、(専門の方には常識なのかもしれませんが)一番最後の「文学とは何か」という講演録です。日本で第一級の英文学者である筆者が「文学とは何か」という問題を学生時代から悩み続け、学会でも解決はおろか、研究さえろくにされていないというのです。史上、特筆すべきはアリストテレス「詩学」、漱石「文学論」、リチャーズ「文学批評の原理」くらい。
筆者は、今後の研究の方向性として、読者の重要性と他学(特に言語学)からのアプローチを提案しています。
漱石の留学当時、ケンブリッジにもオックスフォードにも英文学専攻のコースがなかったのもはじめて知りました。彼が下宿にこもり研究を続けたのはそのせいでもあったのでしょうね。
ブレインストーミングが先の大戦で米軍で始まったこともはじめて知りました。敵の裏を書く作戦は、奇想天外で自由な発想が必要とのこと。ナルホド。