第1~8章の「マーケティングへのゲリラ的アプローチ」がその真髄に当たる部分である。ここで既存のマーケティング手法をいかに用いるかという小企業なりの方法論、心得、判断基準、注意点などを広範に論じ、かつ実際のプランの立て方をアドバイスしている。いわば「小企業のあるべき戦い方」がここに示されている。
以下、第9~27章では具体的な広告戦術を紹介している。取り上げているのは、巡回訪問やテレフォンマーケティング、チラシ、パンフレットなどの「ミニメディア」、新聞や雑誌、ラジオ、テレビ、ダイレクトメールなどの「マスメディア」、ノベルティや無料セミナー、展示会、フェアなどの「ノンメディア」の3分野。たとえばラジオの有料スポットCMについての記述では、ラジオの特性や費用、局の選択、スポット回数などの分析に加え、メッセージやパーソナリティの話し方で差別化を図る戦術を紹介している。小企業にとって限られたマーケティングの機会を入念に選別し、確実に生かそうとするアプローチがここに示されている。実例も豊富で、多くのヒントが得られるはずだ。
なかには、「ゲリラ的」として取り上げるには疑問符のつくものもあるが、マーケティングを小企業ならではの形に再構成しようとする全体の内容は注目に値する。(棚上 勉)