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ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る (光文社新書)

価格: ¥735
カテゴリ: 新書
ブランド: 光文社
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「本気で取り組む人」ご用達の入門書 ★★★★☆
本書における編著者の解題は、アンダーソンの思想を手際よく紹介していて有用である。だが「腑に落ちる」レベルではたぶん私は理解はできなかった。だが本書に責めはない。『想像の共同体』自体が多くの歴史的知識を前提とした議論に満ちており、解題が取りこぼすものが必然的に大きくなるためだ。アンダーソンが実際に具体的な事例をもって考察した、そういうレベルでアンダーソンを綿密にフォローしていかない限り「腑に落ちる」までに理解できない気がした。私はヘタレなので、『想像の共同体』も、調べ物などしないまま読んだから、自然、理解も浅い。私のようにラクしようとする部類には、アンダーソンの首根っこは押さえられないような気がする。逆に、これから本丸にがっぷり四つでとりくむ前提で、入門に読むには有用な本である。

そこまで追うつもりもない人にも、とりあえず概念的な理解を提供してくれる本である。まったく興味がない人も、「日本人」というくくりが当たり前でないと気づくだけでも有用な本である。

ところで本書はどちらかというと読みやすい部類であり、レビューはもっとあってもいいと思うのだが、実際はまだ5件ほどだ。おそらくだが、私のような感じで、なんとなく絡みづらいというふうに思った人が多いのだと思う。
予習と復習にもってこい ★★★★★
「想像の共同体」読後から数年経ち、中身の記憶があやふやになっていた自分にとって、ちょうどよい復習本でした。「想像の共同体、あとがき別冊版」と位置づけできるでしょうか。ベネディクト自身の生い立ちから東南アジア研究の取り組みにいたった経緯、内容の自己批判から最近のナショナリズム研究報告までを自身の言葉で語っており、学者としての真摯な取り組みとネーションを歴史的主体とせずに世界を捉えようとする観点には共感を得ずにいられません。
後半は、梅村氏自身の言葉で「想像の共同体」をわかりやすく解説しています。個人的には、そのシンプルな要約に少々肩透かしをくらいましたが、詳しくは「想像の共同体」を直にあたれ、読み返せということでしょう。しかし、できるだけわかりやすい言葉を選んで、日常生活の何気ない疑問を出発点として論を広げていく解説には、好感がもてました。こちらを先読みするのもありだと思います。

題には「グローバリゼーションを語る」とありますが、ベネディクト自身は、その歴史を19世紀後半にまでさかのぼり、電信や海上交通路などの発達による人的ネットワークの拡大から、その当時に世界各地で起きた革命や「テロリズム」の発生の連鎖を「初期グローバリズム」の特徴として説明しています。
ナショナリズム発生の起源の解説だけでなく、質疑応答での「アメリカが余りに新しいものに執着するので、私はその反対をいこうとしました。」というベネディクトの率直な人柄も実感できるお勧めできる一冊です。

良い意味で人生観が変わった ★★★★★
なんとなく書名に惹かれて読んだ。全く事前知識も基礎知識も無い。なのに読み終わっていろいろなことについての見方・考え方が変わっていることに気づく。これまで生きてきた「日本人」という人生が実は何であったのかを考えさせられるとともに、自分を規定していた枠をいとも簡単に取り外してもらい、自由に、そして大きな可能性を感じることができるようになった気がする。
本書の内容そのものがすべての人に私と同じように受け止められることは無いかもしれないが、ここで語られるグローバリゼーションが、我々の身近で語られる「経済的」なものとは異なり、もっと「人間の可能性」に関連するものであることは感じられるのではないだろうか。
「想像の共同体」最良の入門・解説書 ★★★★★
前半はアンダーソンの講義録、後半は梅森氏によるアンダーソンの思想の解説。
もうすぐしたら古典になるだろう「想像の共同体」だが、その思想の核の部分を上手に説明している。
他のレビュワーさんも書いているが、こうした難しい思想をわかりやすく書くのこそ新書の役割だろう。

ただ多少気になったところも。

まず、梅森氏の解説のところで、グローバリズムが直面するだろう問題と、そうした問題を乗り越えるという場面で、
ナショナリズム及びその意義を批判する際、「しんどい」「情けない」「みっともない」といった、読者の常識に依存するような、ある種の感情論の形でそのまま進めてしまっているのが残念である。
国家がフィクションだからといって直ちに不要になるわけではなく、やはりここはもう少しきちんと論証して欲しかった。

あと、アンダーソンへの質問で、東アジアにおけるナショナリズムについて、というのがあって、これは私も彼がどう答えるか気になって読みすすめたが、
彼は「日本も中国もアメリカも、そのナショナリズムはみんなよくない」といった、ありきたりな、いわゆる「優等生的な回答」であったのにはがっかりした。
いくら理念上よくないことがわかっていたとしても、現実問題としては実際にどのような方法でもって解決するのか、というものが示されないことにはどうしようもない。
特に、ただ「みんなナショナリズムを止めましょう」といっても、例えばその発言が日本語でなされるかぎり、結果としては日本のナショナリズムのみが批判されるだけであり、中国のナショナリズムなどが相対的に強まるようになる可能性が高いので、こうした凡庸な「優等生的な回答」では現実には問題を解決できないだろう。
これを見ると、現実の力の均衡によって維持される関係にある政治というものがあまり考慮されておらず、どうもアンダーソンは理論が先行しており、現実においてはどこまで力を持ちうるかは疑問である。
実際にアンダーソンの論を実際の政治の場に持ち込めるのはあと50年ほどはかかる気がする。

とはいっても、この本の内容自体はとてもすばらしい。
ともかくもアンダーソンの思想を知るにはベストの本だろう。
ベネディクト・アンダーソン、『想像の共同体』を越えて ★★★★★
2005年に早稲田大学で催された国際シンポジウムで、『想像の共同体』の著者であるベネディクト=アンダーソンが特別講義を行なった。本書は、その講義録と編著者による解題、それに14の質疑応答で構成されている。

ここでアンダーソンは、『想像の共同体』成立の前史と、ナショナリズム研究の基本書として余りに有名なこの本に対する自他の評価、そして自らがそれを越えてどこに向かおうとしているかといった点について、たいへん率直に語っている。こうしたアンダーソンの研究動向の紹介がそれ自体非常に興味をそそるし、彼自身が今なお『想像の共同体』を超えて旺盛に新たな目標に向けてチャレンジをしているという事実も刺激的である。

全体の1/3を占める長い解題も、講義で語られた内容の理解を助けて参考になる。

『想像の共同体』を読む前の人も、読んだことのある人も、ナショナリズムに関心がある人であれば、読んで損はしないだろう。