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リヴァイアサン〈1〉 (中公クラシックス)

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: 中央公論新社
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ホッブズの国家論の基底は「平和の希求」である ★★★★★
 リヴァイアサンは四部から成り、一部はホッブズの人間洞察と政治哲学原理、二部は国家論、三部と四部は宗教論です。内容が良く引き合いに出される箇所は国家論ですが、その思想的根拠は第一部に書かれています。だから一部と二部はセットで読まないとホッブズの思想を誤解するのではないでしょうか。中公バックスでは宗教論の箇所は一部要約にしていますが、日本の普通の読者にとっては問題ありません。むしろ全般にわたり意訳風のところが、岩波版よりも意味内容を掴むには良いのではないかと思いました。

 ホッブズは、人間を国家(リヴァイアサン)の素材であると認識し、まず人間の洞察から始めています。第一部はその箇所に該当し、第一章から十二章までは、認識論から始まり、思考、言語、推理・学問、情念、知性、社会関係、宗教、などについての考察がなされていて、この部分もとても面白いのですが、実はホッブズの政治哲学の基本的考え方が十三章から十六章にかけて提示されています。
その考え方は簡単に言うと次のようになります。人間は、自然状態においては、自身の生命を維持するためには何をしても許されるべきである、だが、人間というものは、相互不信に基づく恐怖によって戦争状態に陥り互いに殺し合い滅亡する。だからそれを回避するには、生存を保証するルールを守らせるだけの力を持った共通な権力(国家)を作る以外にはない、というものです。このことを、自然権、自然法という概念を基本に据え、更には権利、義務、契約、約定等々の概念を明確にして、国家やその制度の元となる理論が構築されて行きます。

 この考え方の基本となっているホッブズの人間洞察は、性悪説でもなければ、個人より国家を大切に考えるようなものでもなく、ホッブズが一番大切なことだと考えていたことは、人間がよりよく生きることを含めた「生命の維持」であり、そのための一番基本的なルールは「平和を希求すべし」(第一の自然法の基本部分)ということであって、何よりも、そのことを可能にするものは、人間の理性である、という思想に基づいています。

 やはり読み継がれてきた古典は、ゆっくりと読むと勉強になります。個別事情に惑わされず普遍的なものを読み取るところに古典の面白さがあるように思えます。なにしろ時代背景、現実条件が全然違うのですから。細かく読むと、あまり判然としない箇所も多々ありましたが、その場合には、2008年10月にラテン語から本邦初訳出版された『市民論』(本田裕志訳、京大出版)と併せて読むととても理解が進みます。