太陽 [DVD]
価格: ¥2,815
ヒトラーやレーニンも自作の題材にしたアレクサンドル・ソクーロフ監督が、昭和天皇を主人公に、終戦の年、8月15日の前後を描く。空襲から逃れるため、地下室で生活する天皇(=ヒロヒト)が終戦を決意する苦悩に焦点を当てながらも、ヘイケガニの研究に安らぎを求め、訪れる米軍兵士に「チャップリンに似ている」と言われて喜ぶ姿など、人間としての天皇を映像化。日本人にとって興味深い仕上がりだ。
イッセー尾形は、口をもごもごさせる仕草など、本人の癖を巧みに採り入れつつ、人間味溢れるヒロヒトを好演。侍従らとのやりとりでは笑いも誘う。ソクーロフ監督はセピア調の映像で当時の雰囲気をかもし出し、夢の場面で魚が爆弾を落とすなどシュールな描写も挿入。外国人が描いた日本にしては違和感が少ない。天皇の描写を含め、さまざまな意味で問題を投げかける作品ではあるが、人間になることを許されなかったひとりの運命として観ると、これほどインパクトの強いドラマも少ないだろう。多くの葛藤はラストで、皇后役、桃井かおりの一瞬の表情に凝縮されるのだ。(斉藤博昭)