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抱擁

価格: ¥7,971
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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長篇よりこちらのほうが好き ★★★★★
新聞連載や長篇小説の辻原作品とは文体が違うなあと思いました。
一文一文が隙間なくつながって、不思議な世界を組み立てていく感じにドキドキします。
ヘンリー・ジェイムズの「ねじの回転」を下敷きにしているそうで、確かに
そういう雰囲気はあるのですが、でも2・26事件のころの日本の不穏な感じが
にじんでいて、それがストーリーにしっかり絡んでいて、やっぱりすごいです。
まぎれもなく辻原登ワールドです。最後の一行を読むと、もう一度最初から
読まなくてはと思ってしまいます。壮大な『許されざる者』も良かったのですが、
私はこちらのほうがずっと好みです。
失敗作 ★☆☆☆☆
辻原登氏は大好きな作家の一人ですが、この作品ははっきり言って失敗作。
舞台装置は仰々しいのに、物語がまったく立ち上がってこない。
単純な謎解きができないあいまいさも、この作品に限っては
消化不調を起こす前に読み終わっちゃったという印象。残念。
期待したほど心に波が立たなかった ★★☆☆☆
 時は昭和12年。2・26事件の翌年、18歳の「私」は前田利為侯爵邸で5歳の次女・緑子の小間使いとして働き始めた。緑子は「私」には見えない誰かの動きを目で追うかのような仕草を見せ始める。「私」の前任者にあたるゆきのという女性は嫁いだ相手が皇軍派の首謀者の一人であり、事件後に自らも命を絶っていた。果たして緑子が見つめるのはゆきのの姿なのか…。 

 辻原登の著作を手に取るのはこれが初めてではありません。短編集『枯葉の中の青い炎』では辻原が描く虚実ないまぜの世界の幽玄の美を大いに堪能したものです。
 本書も前田利為邸や2・26事件など、実在の場所や出来事を舞台背景にしながら幽霊譚らしきものが、やわらかさの中にも凛とした気品を漂わせる独特の文体によって綴られていきます。

 しかし私は---文章の美しさは別として---この作品を楽しむことができませんでした。
 昭和12年という時代背景、貴族のお屋敷、無垢なおさな子、奉公人の「私」といったゴシック・ロマン風の装置と役者がそろっているとはいえ、オーソドックスな装置と役者がそろっただけという印象がぬぐえません。この怪異譚に心がざわつく思いがしないのです。

 136頁という小品であるためにわずかな時間で読み終えることができますが、別の言いかたをするならば、わずかな時間で読み終えることができる紙幅しかないために、物語はさらりと通り過ぎていったという思いも残りました。