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遊動亭円木 (文春文庫)

価格: ¥590
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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   遊動亭円木は落語家だった。真打ち昇進直前に、不養生がたたって盲人となり、以来、妹夫婦が経営するマンションで世話になっている。円木と周りにいるさまざまな人々との日常の時間が、この連作短編にゆっくりと流れている。さしずめ、落語でいうところの長屋ばなしか。

   読みすすめながら、地面から数センチほど浮き上がったような感覚にとらわれていることに気づく。思えば前作『翔べ麒麟』もそうだった。非現実感というか、ファンタジーというか、この著者の筆致には、日常を描きながらも、どこか日常から離れていってしまうところがある。

   その心地よさに身を委ねていると、こんな円木の独白に出あったりする。パトロンである明楽のだんなから、大相撲の桝席のチケットをもらったくだり、「妹の声にかすかに、その目で相撲がみえるの、という色合いがこもった。あざけりの色か。悪意があったんじゃない。だれにだってそれくらいの底意はある。底意がなければ人間じゃない」。危うく現実離れしそうな物語の尻尾をつかんでいるのは、こうした残酷さだ。そんな残酷さを円木はユーモアでもって受け流す。残酷さとユーモア。あるいは怖さとおかしさ。そのどちらにも物語の色は染まらず、残酷の裏にユーモアが、ユーモアの裏に残酷さが縫いこまれて、彼らの時間がふわふわと過ぎていく。第36回谷崎潤一郎賞受賞。(文月 達)

ふわりふわりと ★★★★☆
緩やかに流れる大河のような円木の夢と現実が交錯した、やわらかな作品だと思いました。
夢と現実の交錯、誰もが日常に感じるこの浮遊感を小説で堪能されたい方には絶品だと思います。
人生はカタリ、カタリ♪ ★★★★★
遅ればせながら著者の最高傑作を紐解き、感歎!!
人情ものの外見、読みやすさ、オチの文字通り落語のごとき上手さ、更には現代文学の前線で活躍する著者ならではの<語り=騙り>。そのさり気なさは魔術さながら。遊動亭円木は読者の心に生きていると共に(ジャン・バルジャンのように)、小説言語としても脳内をうごめく(ベケットの短編のように)。
「手だれの文体」という以上の意味をこの物語・語りは具えているのだ。
藤沢周平の滋味ある文体と心を打つ人情物語、そして後藤明生の小説言語を共に具えた稀有の文学世界!!シュールなたとえ(?)ながら、舞城王太郎を好まれる向きにはオススメ?!
人間はみんな神様の居候 ★★★★★
視力を失いかけた落語家という主人公の設定がいいです。見える世界と見えない世界、夢現どちらも本当のことのよう。主人公が人生に対して醒めているようでいながら、人の気持ち、世の道理の深いところがわかるというところが面白い。落語という芸能の奥深さにも通じているようです。
時代小説 ★★★★★
 本書は現代が舞台の時代小説のよう。我々が住む世界と時代を同じくする舞台で、昔ながらの人情劇が繰り広げられる。現代を現代的な視点から捕らえる現代小説に物足りなさを感じる方に薦めたい。