ミュージック・ビジネスはひたすら循環運動を繰り返す。じっくりとつくり込まれたアルバムが、マーケット至上主義に走ったポップ・スターのシングルの陰に隠れてしまうという風潮が再び強まっている。しかし、ヴァージンによるヒット曲のコンピレーション・シリーズ『Now That's What I Call Music!』なら、どちらの流れに属する曲も手軽にチェックできる。

   今回は21トラックを収録。ヒップ・ホップ勢が猛威をふるった2002年のチャートから、おなじみのグルーヴが集められている。ジェイ・Zとビヨンセ・ノウルズが絶妙にからみ合うデュオ「‘03 Bonnie & Clyde」で幕を開け、B2K & P・ディディの「Bump, Bump, Bump」、ジェニファー・ロペスのセクシーな「Jenny From the Block」を経て、都会派の大物ヴェテラン勢（L.L.クールJ、スヌープ・ドッグ、ナズ）、新人たち（ニヴェア、ネリー）へと続く。この中ではネリーの「Air Force Ones」が茶目っ気があり際立っている。だが、三菱のクルマのコマーシャルで有名になった、テレポップミュージックによるエレクトロ・ポップ「Breath」も聴き逃せない。その後の展開は、新世代のR&B、エネルギッシュなコンテンポラリー・カントリー、華やかなポップといった、よりヴァラエティに富んだものとなる。

   そこに立ちふさがるかのように登場するシェヴェル、サライヴァ、3ドアーズ・ダウンのモダン・ロック勢がこのコレクションの最後を飾り、ロックというジャンルが表舞台から姿を消しつつあることを思い起こさせる。（Jerry McCulley, Amazon.com）