ピュアリストや革新派からはロカビリーとスウィングを「モダン化」しようとした彼を中傷する声が聞かれるかもしれないが、ロング・アイランド出身のリーゼント頭のセッツァーは彼らをだしにして少なくとも20年間にわたってモウけ続け、今頃笑いがとまらないだろう。予想意外にヒットした前作『The Dirty Boogie』同様、専門家たちの間でいい評判は得られないだろうが、セッツァーそんなことは全く気にかけずに楽しみまくっている。彼は明らかに先駆者たちを崇拝している。が、名曲にも異端的な陽気さをほどこし、彼自身の歓びを阻ばむようなことは決してしていない。(ループサンプリングした「Pennsylvania 6-5000」は驚くほど印象的だし、「In the Mood」はラップになっている!)ボビー・ダーリンの「Mack the Knife」は少々模倣的だが、これもヒット曲をさらに完成度の高いものへと仕上げている。本人も自任している通り、彼が生まれつきのロカビリーライター兼シンガー であることは、そのチューンと一見華やかなインスツルメンタル「Caravan」によって強固なものとなっている。彼のバンドチャートは堅実でモダンだが、もう少し違うアレンジャーの視点があれば、さらによかったかもしれない。スウィングとロカビリーの融合が市場主義的に見えるなら、セッツァーの音楽は ビル・ヘイリーが 「Rock Around the Clock」時代の前にやろうとしていたことをさらに高揚させ、喜びに満ちたバージョンにしたものだということを思い出してほしい。