乃木将軍は偉大だった
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明治末期から裕福な家庭の息子が高等教育を身に付けても、働くでもない、独立するでもない、
親に寄生してブラブラしている”高等遊民”が出現した。
彼らは乃木将軍の殉死を「バカな奴だ」の一言で片付けた。
一方当時の世間は殉死そのものもさることながら、将軍が遺言で乃木家の絶家と廃爵を指示していたことに仰天した。
当時、家制度は絶対だったし、爵位は天皇から授かるもので勝手に返上できなかった。
乃木は、のうのうと特権を貪っている政府・軍の支配層に強烈な異議申し立てを行ったわけだ。
エラそうなことを言いながら家制度に依存していた高等遊民も、冷水を浴びせられたように感じた。
乃木といえば愚将・凡将という評価を耳にするが、一方で誠実そうな写真や、幼少期の昭和天皇が尊敬していたとかのエピソードが結びつかず、かねてより不審だったが、本書を読んで納得した。
正直、潔さ、金銭に恬淡、名誉は一代限り…、乃木こそ真のサムライだった。