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物語タイの歴史―微笑みの国の真実 (中公新書 1913)

価格: ¥966
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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本書は、日本にとって身近な国となった優等生タイの歴史を通時的に概観してみることを目的としています。
なんてすっとぼけた国なんだろう ★★★★☆
・・・と思いました。第2次世界大戦で日本と同盟して欧米に宣戦布告したのに、戦争が終わると「あれ、なしね」と取り消して、それを連合国に納得させてしまったのですから。真面目なんだか不真面目なんだか。

今年タイはまた政治闘争で荒れました。毎度のことです。そろいのTシャツを着てるし、観光バスを組んでデモにやってきたりで、どこかへん。今回は相当数の死者が出ているのにこういっては不謹慎ですが、暴動騒ぎも、はた目から見るとサッカーの試合のあとの場外乱闘を見ているようで、どこまでまじめにやっているのかよくわからない人たちです。

そういう意味では本自体より、国そのもののほうが断然興味を引きます。

英領インドと仏領インドシナにはさまれてどのように独立を維持したのか。

第2次世界大戦では日本と組んでビルマやカンボジアに領土拡張をしていますが、そのことは今日の近隣諸国との関係で障害になっていないのか。

この国については知りたいことが山ほどあります。

でもタイの歴史についての本を探してみると、意外に少ないんですね。他のレヴュアーの方が本書の不備を批判していらっしゃいますが、タイに関してはまじめに研究したらいろいろ障害があるのではないでしょうか。第2次世界大戦終了直後、当時の王様ラーマ8世が不可解な死に方をしていますし、その死に旧日本陸軍の参謀辻正信が関わっているという噂があるし、こんな話が出てくること自体、よくわからない国です。

著者も自分は歴史研究者ではないと断っていらっしゃいます。それを考えれば大健闘のできだと思いました。

逆にいえば、そういう方のところへこの本を書く話がまわっていくこと自体が問題なのです。これはそもそも日本のアカデミズムの問題なのか、日本人がタイに興味がないことが原因なのか。

まあ、あんまり深刻に考えると、タイ人にからかわれてしまいそうですからやめておきましょう。
クーデターと発展 ★★★★☆
クーデターと経済発展が両立する奇妙な国、タイ。著者は通史的なタイの歴史を目指したといっており、この謎に十分応えたとは言い難いが、それでも本書から学ぶことは多かった。

通史といっても比重は西洋諸国の侵攻以降に重きを置いている。タイが東南アジアで唯一独立を保てた理由に自分なりに答えると、一言で言えばバランス感覚だろう。タイは中世から山田長政を重要な地位につけるなど外から入ってくるものに寛大な面があった。一方西洋諸国で学んだ歴代指導者は近代化を進めると共に適宜国民にナショナリズムを植えつけていった。

クーデターと王の仲介の併用もこの国らしいバランス感覚だといえるだろう。終盤にはタクシンも登場するが、傍目には順調に見えたタクシン体制も内部には深い矛盾が潜んでいたようで、タクシンが失脚したのは必然だったと思う。

これからもタイは不可解なまま順調に社会、経済共に発展していくだろう。今後も目が離せない国になりそうだ。
タイ社会とタイ人の理解を助けてくれる ★★★★★
現在の社会のひずみは、過去の史実によって生み出された、という当たり前のことを教えてくれました。
世渡り上手とか、王室の権威だとか、タイを特徴づける一般的な表現はいくつかあるでしょうが、本書は暗に、以下のようなことを言いたいのだという印象を受けました。

華僑系が政治経済を牛耳っていて、貧富の差が異常に激しいという典型的な後進国の特徴を持つ国。

立憲君主制とは格好だけで、司法・議会・行政は事実上、王室・枢密院・国軍が支配している国。

「タイ人」概念は、支配層が支配を正当化するために生み出したイデオロギーに似ていること。

多くの日本企業は、そのひずみを結果的に利用する格好で、低賃金労働力を用いて生産活動を行い、富裕層及び中間層へ製品を販売することで利益を得ています。そして、約3万人といわれる日本人がタイに居住しています。
正統性の怪しげな国ですが、世界中の先進国にとって軍事的・経済的に不可欠の仲になっている国。
結局、華僑にうまくしてやられてる、ってことですね...
ムエタイとトムヤムクンしか知らない人へ ★★★★☆
タイ国の古代からの歴史経緯について、教科書レベルでよくまとめてある。
やはり外交と言う観点を重視しているのは好感。国家も国民も外交の中で
形成されるものであり、タイの自主独立、カンボジアとの文化的摩擦など、
現代に通じるインドシナの流れがすんなり分かる。
しょっちゅう遊びには行くけど、歴史は知らないという人にオススメ。
タイを知るための参考に役立ちました ★★★★★
仕事でタイの行政担当者に会う際の参考にと、タイ行きの飛行機の中でいっきに読みました。確かにほかのレビューにあるように、「歴史書」としては、教科書的で、若干の物足りなさはあると思いますが、通史として、はじめてタイの歴史本を読む者にとってはとても理解しやすいですし、各章の最後に囲みで解説した部分、たとえば自治制度など、タイの現在の制度もよくわかるようになっていて、タイの歴史からつながる現在のタイの姿というものの概要がよく把握できました。新書ですので、仕事や旅行、タイの方と会う機会がある人が、短時間でタイという国の概要を把握するための本としては、おすすめの1冊です。