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功利主義者の読書術

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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公益主義な佐藤さん ★★★★★
功利主義者の読書術 佐藤優 新潮社 2009

2007-2009に小説新潮、月刊現代に連載、掲載されたものに加筆、改稿とある。

それにしても佐藤さんの読書量とその幅の広さには驚く。そして深い洞察力はいったいいつどこで養ったのかと。
本書では、資本主義の本質とは何か、論戦に勝つテクニック、実践的恋愛術を伝授してくれる本、「交渉の達人」になるための参考書、大不況時代を生き抜く智慧、「世直しの罠」に嵌らないために、人間の本性を見抜くテクニック、「沖縄問題」の本質を知るための参考書、再び超大国化を目論むロシアの行方、日本の閉塞状況を打破するための視点という括りでそれぞれ数冊の書を提示して話を進めている。
まさか、石原真理子の「ふぞろいな秘密」が登場するとは思わなかったな。
そして、マルクスの「資本論」のところでこんな風に書くのである。
1991年のソ連崩壊により、マルクス経済学は時代遅れになったと考えられるようになった。その結果、資本主義の内在的論理と限界を理解しないエリートが台頭してきた。一般論として限界を知らない人々は滅茶苦茶な行動をとる。この類なエリートは、資本主義が人間を疎外するシステムであることを理解しないで、手放しに新自由主義的な規制緩和を例さ礼賛する。そして、ライブドア事件や村上ファンド事件のような、国家官僚にとって不都合な事態が生じると、今度は国家の暴力装置を用いて資本の動きを規制しようとする。資本主義の内在的論理を無視した経済への国家の干渉がナチズムやファシズムに類似した政治文化を構築することに現下日本の官僚、特に検察官僚が無自覚なのは恐るべきことだ。「資本論」を読みなおし、資本主義がなぜ強いのかという内在的論理をつかんだ上で、資本主義の害毒を極力抑えるというかつて混合経済とかケインズ経済と呼ばれた政策に立ち返るのが、日本の国家と社会を強化するうえで得策と筆者は考えている。と。
外務省の諜報員?出身で現在は刑事被告人の売れっ子作家 ★★★★☆
役に立つ実用書の紹介本だと思ったら違います。読書によって功利主義の背後にある真理をつかむのだそうな。『論戦に勝つテクニック』の項に酒井順子『負け犬の遠吠え』や石原真理子『ふぞろいな秘密』など突拍子もない本を入れて書評している。面白いやつだな〜。オレは、書評にことよせた社会評論というような読みかたをしました。
『資本主義の本質とは何か』なんて項目もあり、だいたいどこでも同じようなことを書いています。社会主義や革命は、国民の生活が破壊され不幸をもたらすからダメ。小泉改革に代表される新自由主義は、貧困層の増大により人々に不幸をもたらし社会が不安定化し国家が弱体化するからダメ。資本主義の限界を把握しその害悪を政治が極力抑えるという混合経済が良という主張です。かつての社会党右派のような考え方ですね。オレもその意見は正しいと思う。 佐藤優は、イスラエルにベッタリなところを除けば、おおむね良いことをいっているように思えます。この本も読んで損はないと思う。でも、ここで紹介されている本で読みたいと思えたのは、チャペックの『山椒魚戦争』くらいでしたね。
神が人間に何を呼びかけているかを知る技法 ★★★★★
表題は佐藤氏の本書説明。「真実の友情・幸福・愛・信頼・希望は目に見えないが、おぼろげな形でもそれに近づけるのが書籍であり、真実を知る人の方が人生の選択が豊かになると考える功利主義者の発想の下、面白くかつ役に立つ読書法を提示するよう努めた」と述べておられますが、読書家にとっても人生に相当役立つ優れた読書法だと敬服しました。

後書はイエスの言葉「あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」(ヨハネによる福音書第8章32節)で総括されていますが、漫画(うずまき)・小説(カラマーゾフの兄弟、ロング・グッドバイ)・ノンフィクション(ソビエト帝国の最期)・自伝(ふぞろいな秘密)・思想書(資本論)・宗教書(共同幻想論)と幅広く選ばれた約30の書籍が

「資本主義の本質とは何か」「人間の本性を見抜くテクニック」「日本の閉塞状況を打破するための視点」等の10カテゴリー毎に秀逸に読み解かれ、叡智が抽出されており、読書好きでない方にもお薦めいたします。



公開情報の料理の法、量は質に転化する。 ★★★★★
資本論からよみとるエッセンスも、漫画から読み取る寓意も一緒、ということもある。深読みしすぎ、ともとれなくもない。ただ有効な理論や意見、技法が抽出できれば良し。
自分の頭で考えたことか、読んだ本の筆者の考えか?主観と客観の間でゆれる。
他ではおそらく見かけることのない読書術。
さすがの元情報分析官の読書のすすめ、である。
体験が 色濃く出てる ブックレビュー ★★★★★
1.内容
著者の佐藤優さんが、「「役に立つ」」(p2)という観点から選んだ本を評価したもの。なお、「功利主義」には、「自らの救済の材料を見出す」(p321)という意味もあるようだ。
2.評価
著者は、(1)母親が久米島の出身で、(2)同志社大学大学院で神学を学び、(3)その後外務省に奉職して主にロシア関係の仕事をし、(4)いわゆる鈴木宗男事件で逮捕・起訴された人である。本書はこのような著者の体験が存分に出ているブックレビューである。すなわち、(1)から沖縄問題についての本の紹介があり、(2)から『新約聖書』の紹介があり、(3)からロシア関係の本が多かったり、(4)から拘置所の経験がふんだんに出ている内容になっている。また、雑誌に掲載された当時、いわゆる市場原理主義に対する議論が多く、現実でも問題になったので、経済に関する本の紹介も多い(経済学、というより、小説なども経済と絡めて評している)。以上のような背景があるので、読み応えのある本の選択、ならびに内容になっている。ゆえに星5つ。