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中世の東海道をゆく―京から鎌倉へ、旅路の風景 (中公新書)

価格: ¥236
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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自分が想像していたものを凌ぐ地形の検証です。 ★★★★★
現在も議論中である『武功夜話偽書説(秀吉築城の墨俣一夜城はなかった説)』、『桶狭間奇襲説』などにも影響を与えかねない事実を、中世貴族の紀行文、古文書を通して検証した。今までにない検証本です。
作者は飛鳥井雅有、その他の中世の貴族・妻女の紀行文を通して中世の木曾川の流域の考証(中世の木曾川である境川と同じぐらいの大河であった足近川・及川の存在)をしたり、鳴海干潟の干満の差、現在とは全く違う遠州平野の海岸線、大井川の流域検証、浮島湖沼地域の考証と、今までの歴史家まったく行われていない歴史考証(潮汐表による調査)によって、現在通説とされている歴史事象の見直しの丹著を作りました。
この作業によって今までの歴史学界における通説は大幅な訂正を求められるのではないかと考えられます。それほど斬新な発想によって検証された著作です。
地形にこだわり過ぎ ★★★☆☆
当時は干潮を待って干潟を歩いたり、橋や渡しのない川を竿を差して渡ったりしていたことを、地形学や気象学までをも駆使して明らかにしている。しかし、地形にこだわり過ぎたあまり、当時の人びとの営みは鮮明に浮かび上がって来ない。

例えば、真冬でも海女が海に潜ってワカメを採っていたとのことだが、どのような防寒対策をとっていたかには言及が無い。資料が無かったせいかもしれないが、私としては地形よりも、こう言った方面に興味があったので少々残念である。

また、地形に関しては文章と平面図で説明しているが、やはりこれはわかりづらい。本と言う形態はとれなくなるが、今の時代なら CG によって解説すべき事柄だと思う。
中世東海道の科学的検証 ★★★★☆
本書では、貴族の紀行文に歌われた中世東海道の姿を、科学的データを基にして検証している。

歴史研究では、各種文献に現れる地名、寺社名などを現在のそれに重ねて、当時の地理的状況を明らかにしていく作業が一般的だ。
しかし、本書ではそれに留まらず、地理学、地震学、気象学などを縦横に重ねて当時の街道の姿をあらわにしている。
とりわけ、和暦をグレゴリオ暦に換算し、潮汐積算を行い、文献の書かれた当日の潮の干満を明確にしていく作業には感銘を受ける。

こうして紀行文に書かれた状況を解き明かしていく方法は、今までの研究にはない科学的かつ徹底的な方法だ。
そして、解き明かされた状況をみて、再度紀行文を読み返すと、不思議とすっきりと当時の状況がよみがえってくる。
紀行文に現れる「潮待ち」とは一体何時間だったのか、「干潟を渡った時間は何時頃だったのか」「潮の深さは何センチ程度だったのか」
これらが、みな暦換算と潮汐積算で解き明かされていく姿は、歴史が科学的に証明できるということを教えてくれる。
また、紀行文に歌われている和歌の姿も鮮やかによみがえってくる。

さらに、地震学、地理学を屈指し、ボーリング調査の結果まで踏まえて、当時の東海道の姿をあらわにしていく本書は、今までにない新進の歴史書だ。

広重の東海道五十三次も、本書の前ではかすんでしまう。
勝手にわかった気になっていたことがわかった ★★★★★
我々は、日本史においてある地名を聞いたとき、現在のその土地が有史以来同じであるかのように錯覚している。しかし、お台場だって昔は島だったように、同じではない。本書は、中世の東海道を旅した貴族の旅行記を軸に、いかに現在と異なる地形があちこちにあり、旅行が我々の想像を超えて異なっていたかを示している。まだ、東海道と言えば、江戸時代の茫漠としたイメージがあるのだが、それとも違うのである。興味深いのは、揖斐川・長良川・木曾川の旅人に対する「壁」の大きかったことや墨俣の日本東西考的意味上の重要さなどであろうか。忘れかけていた、美濃と尾張の重み(その混乱が、江戸時代の東海道ルートを決めることを含め)もか。「宿」がなんであって、なんでほぼ等間隔に誕生したかも面白い。こういった指摘は、これを知ったから直ちに人生が変わるような類のものではないのだが、日本史を読み直し考え直すときに注意力を高める効果を発揮しよう。補足すれば、本書は随所に潮の満ち引きという地学的検討がなされている。国史学が「国語」と「日本史」ができればいいという世界ではなく、諸学問が諸学問の知恵の相互依存となり出していることも感じさせる。
地理学的に読み解く、約千年前の東海道の風景 ★★★★★
鎌倉時代に京・鎌倉間を往復したある貴族の日記を中心に、中世の東海道がどんなものであったのかを紐解いていく本。

当時の旅の様子や、街道沿いの風俗などを知るための気軽な読み物を期待していると、結構面食らうことになる。
当時の潮の満ち引きを計算したり、川の流れの変遷を丹念に追ったりと、どちらかというと地理学の本、といった趣だからだ。

当時の鳴海潟の潮の満ち引きはどうだった、木曽川の流れはどうだった、浜名湖は海とつながっていたのかいなかったのか、といったことを、時に通説を批判しつつ(といっても、素人にはその通説自体、聞いたこともないものばかりだが)、丹念に検証していく。
まぁどうでもいいと言えばどうでもいいことなのだが、これがまた、なんだかとても面白い。

当時の東海道は海沿いに大小の湖水や内海が多く、現在、新幹線の車窓などから見るものに比べ、地形的にかなり複雑だったようだ。
千年弱でこれだけ風景が変わってしまうということに驚かされる。