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中世を道から読む (講談社現代新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
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新発見らしきものに欠ける。 ★★☆☆☆
話の結構は稀有早大な中世の交通事情の分析から始まるのだけど、結局は坂東の地での道の変遷の話に終始する。

ちょっと期待ハズレ。

というのは当時の街道が川や峠といった自然の要害に阻まれていたことは周知の事実であり、それをきちんと科学的に読み解く方が魅力的だ。

古文書をツナギ合わせて、「路次不自由」とかあれこれ言っても始まらぬ。まして坂東太郎、その渡るに際しての困難さはだれでも分かり切った話で、旧陸軍陸地測量部の地図にはきちんと「徒渉場(歩いて川を渡れる個所)」の記号まであったのだから。

で、船橋しかないとなると、鎌倉街道の一番西よりの道を遣うしかないとか、この道がどうこう、あの道がどうこうというだけでは、知的なサプライズに欠ける。

同様の趣向の「中世の東海道を行く」の方が、名古屋の藤代干潟を渡る際の潮汐表との比較や、木曽三川を渡る際の話など、旅人と軍事行動の違いはあれ、はるかに知的で面白かった。

そして何より気に入らないのが地図の不足。
道路の話をしているのだから、くどいくらいに図版を入れないといけない。さらに系図も。筆者には自明のことかもしれないが、よほどの暦sマニアでないと読みこなすのは困難。

明らかに筆者の努力不足の1冊だと思う。
単に大昔、というか後北条氏のころは今の八高線、相模線沿いの道が主要幹線でしたといういうだけの提示しかできないのなら、力量不足というべし。
道を知ることで戦国時代の実相が掴める! ★★★★★
「中世の道」という概念に新たな光を当てた好著。
豊富な史料を駆使し、様々な角度から中世の道を解説してくれるので、街道や河川の交通状況だけでなく、戦国に生きる人々の時間・空間感覚までも理解できる。道という角度から戦国の合戦の実相も見えてくる。さらに、鉢形、愛宕山、荒砥など峠や街道と城との関係にも触れており、中世古城ファンにも新たな視点を提供している。
 さらに構成が上手いので、話がどんどんつながっていく。新書特有の「何々の謎を解く」的な大風呂敷も、大げさな表現もないので好感が持てる上、文章かうまいのでサクサク読めてしまう。最近は、本書の著者である齋藤慎一氏や黒田基樹氏をはじめとした「読みやすい」歴史研究家の本が次々と出てきており、戦国関東ブーム到来の予感がする。
 出版業界は、こうした好著を新書という形態で、これからもどんどん出していってほしい。
越すに越されぬ利根川…「路次不自由」の戦国史 ★★★☆☆
戦国期の関東平野を中心に、武将が発信した書状の現代語訳から、当時の交通事情を書き起こしている。積雪、増水…移動の自由が、自然の気分次第だった戦国時代の交通事情で、目的地にたどり着けないことは日常だった戦国武将の書状には「路次不自由」の言葉が多用されていたという。特に関東平野を真っ二つに割る大河・利根川の渡河について、詳しく書いている。中下流のように、渡船や舟橋なら場所がわかるが、上流では瀬を徒渉するのが一般的だったという。そうなると、どこを渡ればいいのかは地元民しか分からない。山賊が出る峠も地元民のサポートがなければ越えられない。山飛び谷越えという言葉が実感を伴って伝わってくる。また、中世の江戸について簡略に論じていて、隅田川の渡河地点だった浅草などを中心に、水陸交通の要衝として江戸は都市化していたと、著者はみる。

武将の敵味方関係で交通が不自由だった、ということもあるだろうが、本書を読んでいると、開発され尽くした関東平野の元の自然な姿が浮かび上がる。書状からの引用が多いので、巻末に年表があったり、地図が多いのは差し引いても、一般書、新書としての読みやすさが多少犠牲になっている感はある。特に最終章の中世鎌倉街道の変遷について関東在住が長い私も、知らない地名や中世の関東史が入り交じり、あまり理解ができなかった。越後から利根川を越え、江戸、鎌倉などへ至るモデルルートを設定して紙上踏破をしてみるなどの遊びをしてもよかったんじゃないかなあとも思った。