これらの出来事に触発されて、喜多郎は四国でお遍路の旅を開始した。巡礼先の88か所の寺には、それぞれ独特の響きをもつ鐘がある。喜多郎は巡礼の道すがら、これらの鐘の音を録音し、マルチCDシリーズの第1弾となる本作『The Sacred Journey of Ku-Kai』の中にうまく取りこんだ。心の思い描くままに瞑想的な情景をつむぎ出す彼は、みずから演奏するフルート、エレクトリック・シタール、胡琴(中国ヴァイオリン)、ピパ(中国琵琶)、そしておなじみのシンセサイザーを今まで以上に活躍させている。
喜多郎の作品では、大げさな終わり方や大甘のメロディーが傷となるケースがしばしばあった。本作にもそれらの傷は時おり見られるが、禅の庭の趣きを漂わせた「道を求めて Michi」や、儀式の場を思わせる「儀 Gi」(チベット人フルート奏者、ナワン・ケチョをフィーチャー)といったトラックでの彼は、より純化された魂に到達している。(John Diliberto, Amazon.com)