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細雪 (中) (新潮文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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穏やかな上巻との対照性がお見事 ★★★★★
 上巻が和風美女・三女雪子の見合いの巻なら、中巻はモダンな四女妙子の自由恋愛の巻である。関西に土地勘のある読者でも最早知らない人の多い昭和初期の阪神大水害、更に厳しくなる第二次大戦中の時局を背景に、四女妙子の奔放で危なっかしい恋愛が周囲をマゴつかせる様を描く。

 緊迫した世情には全く疎い、没落名家の姉妹達が展開する雅かな生活振りがまったりと美しい。東京人・谷崎の見出だした「上方文化」というのは、それはそれでバイアスがかかったものなかもしれないが、やっぱり今の時代に読むと魅力的ですね。

 この中巻はコテコテのドラマチックな展開が続くんだけど、これが本当に妙子のモデルになった方に全部起こったことなら、かなり目まぐるしい人生を送られた方だったのではないかと思う。ひたすらノンビリした上巻と対照的なこの中巻の「動き」は、それそのまんま雪子と妙子の対象性なのでしょう。お見事な構成だと思います。
戦争なんてどこにあるの? ★★★★☆
中巻には雪子の見合いのシーンは登場しません。しかし上巻と同じように淡々と日常生活は過ぎていきます。昭和13年の日本が舞台です。外国人は神戸を後にしていきます。たしかに新しい恋愛の萌芽は生まれます。しかし大きなインパクトは持ちません。日常性の変転の中での一場面のように死も描かれます。むしろかなりのスペースを割かれるのは、人間にはコントロールできない自然現象です。どちらもれっきとした歴史的な事実である神戸での大水害と東京での台風が主人公たちの運命に影響を持つイヴェントとして描かれます。人間の自由意志に基づく自分探しなんてここでは何の意味も持ちません。人生のデザインへの熱情に基づく小ざかしい意図はすべて天災と運命そして人間の別れによって挫折します。いや挫折の意識なんてここには存在しません。ただあるのは別れの連続です。その中で継続していくのは姉妹の密接な関係であり、一瞬の瞬間の中にこそ意識される関西の風土(風景、風、色)です。格差社会なんて決して21世紀の珍しいものではありません。それは厳然と戦前の日本に存在したのです。お手伝いさんの存在と身分の違いへの厳然たる意識は、作品の中であげられるさまざまなブランドと共に、この日常性のディテールの積み重ねにアクセントを添えています。経済的な自由と自由恋愛の欠如なんて誰にも強く意識されることはありません。そんなものがどうしたのでしょう。誰もひとつの方便以上にはこれらを眼を吊り上げて意識することはありません。
いよいよ大事件が!、でも物語はたんたんと続く ★★★★★
「上」と異なり、主要な登場人物が生命の危機に瀕したり、話は波乱万丈の物語に発展してきているのだが、どんなときにも物事を様々な角度からみて検証し冷静な情勢分析を行い、必要な手順を着実に踏んでいく主人公たちの態度により、「上流階級の美しい3姉妹の優雅な物語」がゆったりと流れていくという小説のスタイルは微動だにしない。ドロドロとした人間の内面も、人の生き死にのドラマもたんたんと優雅に描かれてしまうので、コミカルな印象さえ受ける。また、注を読むと、関西で握りずしを食べるようになったのは関東大震災以降であること、トロは田舎者が食べるネタだとされていたことなどいろいろなことがわかっておもしろい。
切ない、切ない。 ★★★★★
 中巻の中で最も私を切ない気持ちにさせたのは写真師の板倉である。
 
 末娘の妙子の許嫁である奥畑家の丁稚から、単身渡米し苦学力行の末、写真館を開業。大洪水では命がけで妙子を救出し、ついには恋仲となる。
 

 しかし蒔岡家との家柄の違いから、最後までその関係は認められず、妙子の命の恩人であるにもかかわらず蒔岡家の人々は彼の存在を厄介なものとしてしか見ない。そして板倉がたどる運命。

 板倉は一体何を象徴しているのであろうか。

 「家柄」というものの持つ意味の大きさよりも、やはりそこには手の届かぬ女性への憧憬、いくらあがいても手に入れることのできない、女性に対する男のはかなさが象徴されているのではないか。

 「細雪」にもやはり、谷崎潤一郎特有の「美㡊??や「女」というものへの彼の思いが一貫して流れている。この作品におけるそれは終始穏やかであるが、この板倉の一件だけはその流れが違った流れ方をしているように思う。

 板倉のことを考えると、なんとも言えない切なさを感じる。

 (女中のお春の独り言の癖や、彼女に関するその他のエピソードには何だか微笑みがもれます。でも、女中となったいきさつは何だか切なくもあります)

 
 
 

谷崎らしい作品 ★★★★★
四人姉妹を主役にした、ゆったりと話を進めてゆく、いかにも谷崎の作品。これが戦時中に書かれたとは思えない。