未完の大作『神々との闘い編』のプロットは、アーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』あたりを思わせるものです。地球の進化は高等な宇宙人によって操られたもので、彼らの存在が太古の人間から受け継がれる中で“神”と呼ばれるようになったというものです。但し、ここに出てくる神=宇宙人には邪悪な面もあり、自分達が進化に関与しているという秘密に近づいた者は殺してしまうのです。009達が偶然この秘密に近づいてしまい、神=宇宙人との全面対決が避けられなくなったところで残念ながら連載は中絶しています。
宇宙人との戦いというのはSFマンガとしては決して突飛なものではありませんが、ここでは彼らを“神”として位置づけている為か、哲学的で重々しいムードに満ちあふれています。
この作品は元々『天使編』(本文庫では23巻に収録)として書き始められたものの中絶してしまい、構想を新たにして再度書かれたものですが、『天使編』と同じ運命を辿ってしまいました。晩年の石ノ森氏は完結編のプロットを書き始めており、その一部がテレビ東京のアニメで放映されましたが、作者の死によって永遠に完結しないこととなってしまいました。