全盛期のバドを捉えた名盤
★★★★★
ノーマングランツがプロデュースした2枚の10インチLP(Bud Powell-Piano Solo,Bud Powell-Piano)からなる2オン1LPがCD化されたもの。今回のリイシューでは、音質の驚異的?向上が謳われたリマスターがなされている。
古いCDとは中身はまったく同じ。曲目も曲順も一緒だ。但し、音質がかなり変わっている。正確に言えば、やはりぐっと良くなっている。聞き比べてみるとわかるが、今までのCDでは霧がかかったように不鮮明だったところがなくなり、霧が晴れて音はよく聞こえるようになった。主役の三人を食いそうなほど全編に渡って鳴り響いていたテープヒスノイズも、上手に消除処理されていて嬉しい限りだ。具体的に言えば、バドの後ろで微かに聞こえていた、マックス・ローチのドラムス(ブラシ)、レイ・ブラウン、カーリー・ラッセルのベースの音がハッキリと聞き取れる。特にベースの音は、古いCDではほとんど聞こえていなかったので、大違いだ。
だが、逆に言えばその分ピアノの音が引っ込んでいると感じてしまう。結局本盤の主役はバドのピアノの音である訳で、その辺り好き嫌いが分かれるかもしれない。個人的には、このリマスター盤を楽しめたが、毎日聞くのは少し辛いかもしれない。不思議なことに、何故か今までのCDの方が気楽に聴けて愛着を感じてしまう。やはりリマスターによって音が綺麗になった分、失われてしまったものー例えば音の生の臭さというか、パワーやインパクトーがあるのではないだろうか。どこかよそ行き感があってどこか馴染めないところがある。
バドが好きだ。
★★★★★
バド・パウエル(p)マックス・ローチ(ds)
レイ・ブラウン(b)[1]-[6]カーリー・ラッセル(b)[7]-[13]
しょっぱなの「Tempus Fugit」の力強いイントロで一気に興奮の渦に巻き込まれるが、そう
なったら最後、後は次々に繰り出される、めくるめくピアノタッチに、ただただ感動するだ
けだ。息をつく間もなく、あっとゆう間に流れて最後までいく。そしてまた最初からくりか
えし聞いている僕がいる・・・。
「Cherokee」みたいなアップテンポの曲も良いし、「I'll keep Loving You」みたいな
スローバラードも素晴らしい。ただ僕が好きなのはミドルテンポの「Strictly Confidential」
や「So Sorry Please」だ。なぜかと尋ねられてもわからない、そもそもバド・パウエルの
魅力は端的に何かと尋ねられてもわからないだろう。僕にとってテクニシャンはオスカー・
ピーターソンやジーン・ハリスだし、内面のさざめきを表現するのはビル・エヴァンスだった
りだが、バドの魅力はそのどれでもない。
大抵どの楽器奏者にも一人や二人、愛してやまないのに理屈じゃなく理由がわからないプレー
ヤーがいたりするが、僕にとってのバド・パウエルは、まさしくそうゆうピアノ奏者だ。
まあ、つまり、なんだ、その、好きなんだよバドがさ。
香がする
★★★★★
バド・パウエルは、斜めからでも正面からでも、
聴き流してもまじめに聴いても、
どこからでも入ってきて、聴いている、
ということが起こる。
香がする。芸術的香りと言うらしい。
この人はたまたまジャズピアノであって、
他の芸術でも同じように活動ができただろう。
例えば絵を描けば、マティスや梅原龍三郎、
あるいは横山大観のような松も描けたに違いない。
作為がなく、全ての音がジャズという必然なのだ。
これはいい、、、
★★★★★
録音は古い。スタイリッシュさなど微塵もない。ただただピアノを弾くのが好きで演奏にのめりこんでいるのだろう。わずか数分の短い曲に込められた激情の数々、密度の濃い時間。1曲目から飛ばしまくり。ラストは淡々と綴られる名バラード。間違いなくバドパウエルの傑作のひとつ。
Bud Powellの最高傑作
★★★★★
バド・パウエルが残した録音の中でも、特に高いパフォーマンスクオリティをもつこの作品は、パウエルが受けた差別的行為の後だったにも関わらず、素晴らしい演奏を収めている。収録曲は前半がパウエルの作曲を中心に構成され、後半はスタンダードが殆どとなっている。バド・パウエルの傑作のひとつであるTempus Fugitからスタートし、パウエルのビバップピアニストとしての才能を余すことなく披露している。そのほかにもCherokeeやSweet Georgia Brownでもスピーディなスイングの演奏を聴かせるが、All God's Chillun Got Rhythmは同じようなテンポでもペダルをうまく活用し速いテンポのなかでもソフトな雰囲気で一味違う演出をしている。バド・パウエル最高傑作バラードとなるI'll Keep Loving Youは、II-Vの進行を繰り返しブリッジではFからDbへ変調しダイナミックなアレンジを聴かせる。この曲ではメロディメーカーとしてのパウエルの才能が冴え渡る。ジャズ史に残る傑作といっても過言ではないと思うが、今日お目にかかる機会が少ないのは残念だ。So Sorry, Pleaseも素敵なメロディだ。ペンタトニックスケールを使い、左手の5度や7度のボイシングを上手に使ったオーケストレイションが曲全体を安定させる。スタンダードでもBody and Soulを美しく奏でたり、ビバップのパイオニアとしてだけではなく芸術的ピアニストとしての力量も充分に発揮している。残念ながら音質は1940年代相応のものに聴こえるが、バド・パウエルの録音でこれほど演奏クオリティが高い録音が余り残っていないので是非聴いておきたいアルバムだ。