田中芳樹氏の歴史観を見事に反映した、名作といえるでしょう。歴史物にありがちな、史実を書くのではなく、物語としての圧倒的な存在感、同氏の力量が存分に発揮されています。
日本では馴染みの少ない中国の宋末元初を描くこの物語は圧倒的な質量を感じる大群像劇だ。テンポよく、飽きずに読み進ませる筆者の力はさすがである。しかし、この時代のあまりの質量に筆者自身が圧倒されているようでもあり、ただ歴史的な事柄を羅列するに終わってしまっている。魅力的な題材であるだけに、実に惜しい。