文句なく1990年代初の英国を代表するバンドとなった(おかしなことに当初は第2の“ザ・スミス”と呼ばれていた)スウェードは、頭いっぱいに詰めこんだ『Ziggy Stardust』と都会的な現実逃避や、行きずりの愛の交歓、気晴らしのスリル、少々のデカダンスに満ちた快楽主義の教えによって、陰気なアメリカのグランジ勢の重苦しく沈んだ影響下から抜け出した。そうした要素が、「So Young」(「アヘンをやろう」とブレット・アンダーソンは叫んでいる)と「Animal Nitrate」を、チャリティーショップで買った毛皮のコートをまとって練り歩くのとさして変わらないサウンドにしている。けれども、その音楽はあまりに出来が良すぎたためか長くは続かなかった。
皮肉なタイトルとなった「Stay Together」(なぜ本作には8分間のフルバージョンを収録していないのだろう?)は、それまでになく壮大なトラックだったが、ブレット・アンダーソンと浮遊感のあるギターの達人バーナード・バトラーとのミステリアスな同盟関係は行き詰まりを迎えていた。そして、ふたりのパートナーシップは、名作『Dog Man Star』のミキサーの人選をめぐって解消されることとなる。その『Dog Man Star』からは、アンセム的な「We Are the Pigs」や「New Generation」「The Wild Ones」が本作に収録されている。
バーナードが抜けた穴を、プールのグラマースクールの生徒だった敏腕ギタリスト、リチャード・オークスが埋めると、スウェードは騒々しいグラム・ポップ「Trash」「Electricity」といったトラックによってヒットチャートの常連となった。けれども近頃のブレット・アンダーソンが作りだすサウンドは、英国郊外のドラッグがはびこる裏通りの一員というよりは、傍観者のように聞こえる。本作でしか聴けない新曲2曲には、少々がっかりさせられる(「Love the Way You Love」はフィル・オーキーがカムバックしたようなサウンドだ)。だが誰にでも浮き沈みはつきもので、あらゆる点から公平に見て、すでにスウェードはロック史上にその名を刻んでいる。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)