このアルバムは選曲・構成のセンスがとてもいい。「白鳥の湖」からの1曲“ロシアの踊り”はヴァイオリンをフィーチャーした一種のダンスチューンだが、これを冒頭にもってくるのはいいアイディアだ。正統派の名曲「序奏とロンド・カプリチオーソ」や「ツィガーヌ」を要所に配しながらも、ショスタコーヴィチの意外に健康でロマンティックな旋律美を持つ「ロマンス」や、ジョン・ウィリアムズの「シンドラーのリスト」メイン・テーマなど変化球をバランスよく混ぜてくるところなど、このヴァイオリニストの若さ、幅の広さを予感させる。バリー・ワーズワース指揮による、歌心にすぐれた肉厚で格調高い響きのロイヤル・フィルも好サポート。録音もあざやかで潤いある音質で、満足度は高い。 単に若手美人ヴァイオリニストのデビュー盤という以上に、オーケストラとヴァイオリン・ソロのブレンドされた、メロディアスな世界を堪能したい人におすすめの、すぐれたアルバムに仕上がっている。(林田直樹)