生物進化論や地質学などを興味深く説明してくれる本
★★★★☆
かつて地球の表面は完全に氷で覆われていたという地質学的事実が、明らかになってきたらしい。これを、「スノーボールアース仮説」(全球凍結仮説)と呼び、本書はその内容と、これがもたらす生物進化への影響等を分かりやすく紹介している。
全球凍結は、25億5000万年前〜22億年前の原生代前期氷河時代(ヒューロニアン氷河時代)と、7億3000万年前〜6億3500万年前の原生代後期氷河時代(スターチアン氷河時代とマリノアン氷河時代)の3回あったそうだ。
6500万年前に、恐竜が絶滅した原因が最近になって「巨大隕石衝突」である学説が受け入れられたと同様に、あながちあり得ないことではないとではない。ただ、生物進化の歴史を考えると、原生代前期の全球凍結のイベントをシアノバクテリアは生き抜き、原生代後期の全球凍結を真核細胞生物を生き抜いたことになる。どうやって生きのびたのかは示されてはいないが、(生きのびた)直後には生物は多様化し繁栄したことも事実である。
地球の環境維持システムやCO2温室効果問題に深い知識を与え、更には生物進化論・地質学などを興味深く説明してくれ、色々楽しくかつ面白く読める。
地球環境のダイナミックな変転
★★★★★
「凍った地球」という題名からは人口を膾炙する地球温暖化問題、特にアンチ地球温暖化の論説かと思いきや、さらにスケールの大きい、地球や生命の進化に関するスノーボールアース説を真っ正面から扱った書であった。一見、まったくあり得ないような話だが、地球科学の分野では有力な仮説であるとのことである。こういったあり得なさそうな仮説が事実と検証の組み合わせから築き上げられていくところが科学のおもしろさである。
太古の地球は全体が凍結していた。しかもその全球凍結といわれる状態こそが生命の進化に不可欠であったという。著者は早い段階からこの仮説についての研究を進めていたとのことである。様々な地質学的な調査・研究や理論・仮説からこのスノーボールアース仮説を構築していく過程はなかなかに面白い。またこの学説を作り上げてきた魅力あふれる学者たちの人物像も面白い。
仮説であるが故、多方面から種々の反論や検証がある。斬新であり、しかも裏付けがあるので広く注目を集めるのは当然の結末でもあった。半焼の簡単なものもあれば難しいものもある。論争の中でスノーボールアース仮説がさらに強固なものとなっていく過程は科学の発展のモデルケースである。凍り付いたのになぜ生命が生存できたのか、何が契機となって全球凍結から抜け出せるのかといったことの説明は科学のおもしろさを実感させるものである。
題名から期待する向きもあるかもしれないが、地球温暖化とこの仮説はタイムスケールの違いがあり、直接関係するものではない。ただし、地球のシステムを理解することはこれからの地球の行く末を考えていく上で不可欠である。このようなダイナミックな変転を経てこそ今の地球があると思うと感無量である。
謎を解き明かす者たちの頭脳に脱帽です
★★★★★
スノーボールアース仮説が冷静に秩序立てて語られています。46億年の間、熱せられ、冷やされ、くっつき、離れ、ひっくり返され、かき回され、そうしてできた現在の地球表面に存在するほんのわずかな過去の記録を手がかりに大胆な仮説が作り出されていきます。その謎を解き明かしていく人々の頭脳に、脱帽せずにはいられません。
面白く読めました!!
★★★★★
スノーボール・アースに関する類書は多く存在しますが,
本書は,著者自身の研究体験に基づいて,どのようないきさつで
スノーボール・アース研究に関わらざるを得なくなっていったのか,
その背景が前半部から述べられていて,いきなり話にのめりこんでしまいます.
また,後半部では研究者間の議論の攻防が活き活きと活写されていて,
研究者間の厳しくも楽しい(?)世界を垣間見ることができます.
つまり,研究者としての人間模様も楽しめます.
また,私自身も地球科学を専攻する研究者ですが,今まで知らなかった
地球物理学的機構や地質学的な現象を,これでもか!というくらい
丁寧にわかりやすく詳述されていて,著者の誠意が感じられます.
確かに,読んでいて難しい箇所は何箇所か出てきますが(例えば,
ウォーカー・フィードバックなど),それでもよく読めばわかるように
説明されているので飽きません.
スノーボール・アース仮説が,著者が研究テーマに挙げている
「ハビタブルな惑星(生命が存在できる条件の惑星)」とは何か
というテーマに密接に結びついているとは,目からウロコで,
とても興味深いことだと思いました.
テーマが壮大で,このような研究を続けられている著者をうらやましく
思います.
壮大な知的アドベンチャー!科学の面白さを満喫しました
★★★★★
スノーボールアース仮説・・・かつて地球は全球凍結したことがあった!という衝撃的仮説。もしこれが真実なら宇宙から見た地球は「“白”かった」ことになる。生命存在の可能性を退ける氷の惑星。私たちの星、地球がかつてそのような姿であったとは!しかも、その大イベントがなかったら人類は今ここにいなかった?!ある日著者の下に舞い込んだ一通のオレンジ色の封書から、この大胆な仮説を巡る長い検証の旅が始まる・・・。著者は東大准教授で、スノーボールアース研究の日本における第一人者。絡み合った糸を解きほぐすような丁寧な論理展開、立ち止まる度にすかさず差し出される易しい手引書。敏腕のガイドは、科学者たちの熾烈な攻防や、謎が謎を呼ぶミステリアスな展開を織り込みながら、私たちを一気に最終章まで導いてくれる。スノーボール仮説の山頂からは、地球と生命のたどった壮大な歴史を読みおこす科学の足跡がよく見晴らせる。爽快な読後感である。