地球環境は変動することが本質
★★★★★
「地球環境は変動することが本質である。」というのを地球科学を用いて解説、または現代科学の限界をていねいに示している。
地球規模の炭素循環では、大気→地殻→海洋→地殻→大気、という循環を通じて炭素が地殻に固定化されていく、このサイクルは化学的風化、化学的結合、地殻変動、火山活動、など様々な作用により成り立っている。
近視眼的には炭素の固定には森林の循環が注目されるが、地質学的時間スケールでみると炭素のほとんどがケイ酸塩鉱物など地殻に固定されている。
不確定な部分も多いが、大雑把な地球史として、
46憶年前に地球が誕生し、40憶年前に海と生命、25〜20憶年前に大気に酸素と真核生物誕生、5憶年前に陸上生物、多細胞生物(カンブリア爆発)、6500万年前恐竜絶滅、2万年〜1.3万年前最終氷河期、そして現代となっている。
生命が陸上に上がった以降でも地球の環境変化は凄まじく、地球全体が氷に覆われるような氷河期と間氷河期を繰り返してきた。
その温度変化は温室効果ガス(CH4 CO2)の変動として地層や氷河に記録されている。
ここ1.3万年の気候はなぜか安定している、安定した気候のもとに人類は繁栄することが出来た。
しかし過去80万年にもみられないCO2濃度の増加がここ数百年の間に起こっている、これは明らかに地球の循環サイクルに影響を与えるだろう。
だが、超複雑系である地球システムは現在の地球科学では、ほとんどが未知である、今後の予想は誰にも出来ないのである。
それを踏まえてどうするかは、それぞれ各自が考えるべきだろう。
大きな矛盾をはらんでいる
★★☆☆☆
たいへんにすぐれた内容の本ですが、大きな矛盾を感じないでもいられません。
著者は「地球環境は激変を重ねてきた。そしてごく最近の地球環境の安定性によって人間が存在し得た。したがって、これからも現在の環境維持に努めなくてはならない」というスタンスに立っています。つまり地球環境はものすごく変わってきたけれども、でもいまの環境を全力で維持しなくてはならない、というスタンスです。これは「地球環境46億年の大変動史」という書名から見て、はなはだしい矛盾です。
それはたとえば、シアノバクテリアが酸素を作り出して地球を汚染したこと(嫌気性生物の大量絶滅)は別に悪いことではないけれど、人間が環境を大きく変えてしまうことは不自然であるとする考え方でもあります。
要するに事実の中に(生物学的)願望が混入し、判断の混乱を招いています。そもそも人間という種が持つ生物学的願望にこそ、今日の事態を招いた最大の原因があるのではないでしょうか。
穏やかだけど,厳しすぎるこの惑星の上に生き続けるということ
★★★★☆
地球とは穏やかな環境を数億年、数十億年に渡って保ち続けた奇蹟の惑星であるらしい。小惑星衝突や,地球規模の大噴火、果ては太陽の照射が少ない環境でも巧妙に時にその一部である生命活動をも巧妙に使いより穏やかな平衡状態に達するフィードバックが働いて結果生命をその体の中に育み続けてきたようだ。と、奇蹟の星に生まれた人類はなんと幸運な種であろうかと思ってしまうが、ことはそれほど単純ではないようだ。この長い期間、種を保ち続けてきたのは我々が普段「生き物」と認識しているような眼に見える生き物とは違うようである。地球環境のちょっとした変動はたちまち修正されるといってもその時間スケールは数百、数千万年のことらしいし、穏やかな時期と言っても人類の生存が不可能な環境が果てしなく繰り返されてきたのが現実であり、我々抱く「青く穏やかな地球」はまったく例外的に訪れたたった1万年の記憶なのらしい。そんなことがおぼろげに分かった時につい考えてしまうのは、こんなとんでも無い事を分かってしまったこの本の著者らの人生観はいったいどうなってしまうのだろうかと余計な心配をさせらてしまう本である。