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後巷説百物語 (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)

価格: ¥1
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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今は亡き人たち ★★★★★
時代は明治、一白翁こと山岡百介が昔の不思議な話を語り始めます。

シリーズの前2作とは話の作りが違います。
安楽椅子探偵もののようでもあります。

一白翁が語る「過去の話」というのが、哀愁というか、昔を懐かしむ物悲しさがあり、いい雰囲気が出ているんです。
これが物凄くツボにはまりました。

ラストもきれいにまとまってます。
時代は進む ★★★★★
開国を経て近代化した日本。
江戸から明治に舞台が移ったことは、この巷説百物語シリーズを一応の終結に持っていくためには必要なことだったのでしょう。

祟りや奇怪、伝説を頭から「怪しい」と否定する合理主義の渋谷と異国かぶれの倉田。一方近代に順応できず、一白翁の不思議話に心奪われる与次郎。 きっと今まで又市一味の華麗な仕掛けを目の当たりにし、この本を手にとった私は与次郎の心に近いのだと思います。

だからこそ、一白翁の語る又市たちの昔話は心に染みる。
今までずっと又市たちのすぐ近くで「怪」が生きていた時代を見てきたわけだから、簡単に昔話にはできないし、したくない。それでも時代は進み、このシリーズも又市一味の生き様を過去のものとして語るところまできてしまった。
否応なしに、百介同様読者である私達も又市やおぎん、治平が消えてしまったことを受け入れなければならないんですよね。
それが本編を通じて感じた切なさなのかなと思います。

ラストは切ないけれど温かいです、号泣しました。一白翁…百介は、最後の最後でもう一度又市の仕掛けに一枚噛むことができたと思ったと思うのです。だから嬉しかったんじゃないかなぁ。
続で感じた喪失感とはまた違う、淋しいけれど又市の存在を確かに感じることができた温かいラストでした。

出会えてよかった、と心から思えた一冊です!

さて、次は前巷説百物語の世界で、もう一度又市に会いに行きたいと思います。
最後の鈴音 ★★★☆☆
時代は江戸の太平の世が終わり明治に入っています。
老人となった語り手の百介は隠居生活をしていて、昔の冒険を懐かしむ生活を送っていた。
風変わりな四人組がその昔話を聞きに訪れるという設定で妖怪話が語られる。
四人の掛け合いのような長い前振りも昔話を持ってくるのに必要なのかもしれないけど、二人くらいに絞ってもらったほうが読みやすかったかと。
それこそが京極と思う人もいるんだろうけどね。
どれも隠居の老人が語るのは表の話、妖怪の名を借りた不思議な話である。
そのあとで同居の娘に種明かしのように裏の話をするという構成はこれまでとほぼ同じだった。
しかし六篇の話のどこにも強い邂逅の思いが込められている。
最後に聞こえた鈴の音は、どこまで鳴響いたのだろうか。
君子よ、今こそ怪力乱神を語れ ★★★★★
京極夏彦の最高傑作は何かという質問に、私は今まで「豆腐小僧 双六道中」を挙げてきた。「巷説百物語」の正・続編は優れた読み物であるが、話があまりに陰惨であるために、私には躊躇いがあった。また、又市らが施す仕掛けの危うさに、現実性の希薄さを感じたのも、このシリーズを避ける理由でもあった。しかしこの第三作を読むに至って、やはりこれは、作者にとって最高の作品なのではあるまいか、と考える。

最初の「赤えいの魚」は以前の作品同様に、残酷な描写が歪んだ世界を原色に彩っている。しかしその後の5作品は、次第に雅味を帯びてきて、最終話「風の神」はもはや晩秋の風の如く清爽、また小春の日だまりの如く静穏な趣となり、読後に深い余韻を残す。これまでの長い道のりを主人公・山岡桃介と共に歩んだ読者なら、この味わいがわかるであろう。正に名品である。

現代は怪異の居場所が失われて久しい。妄りに怪力乱神を弄ぶ風潮はまことに憂うべきことではあるが、これは怪異を尊んで語る本来のあり方とは似ても似つかぬ、単なる虚仮威し、金儲けの手段であるに過ぎない。人の世にあって怪異とは憂き世の逃避所のようなもの。山岡桃介は江戸の良心のような粋人であった。彼のような人が生きやすい世の中なら、この世はもっと住みやすいのではあるまいか。現実の方が余程恐ろしい現代にあって、君子ならばこそ、怪異を本来の姿にて語るべき刻であろうと思う。
百物語の語り部・百介の物語 ★★★★★
◆「赤えいの魚」

  神仏の顔が赤くなると、恐ろしい災厄があるという言い伝え。
  それを軽んじた俗人の存在により、その土地そのものが滅びる、
  という民間伝承がベースとなっています。



◆「天火」

  「天火」とは、もともと雷光または落雷による天災のこと。

  本作では、濡れ衣の罪により、又市が処刑されることに……。
  歴史上の大事件とも関わる「大仕掛け」には、驚かされます。



◆「手負蛇」

  親子三代、蛇に祟られた一族の物語。



◆「山男」

  「妖怪」の力が弱まったことを嘆く一白翁に対し、小夜が言う台詞、

  
  「妖怪てェのは、土地に湧くもの時代に湧くもの。
   場所や時世を間違えちゃ、何の役にも立ちゃしないのサ」


   が印象的。



◆「五位の光」

  〈京極堂〉シリーズ『陰摩羅鬼の瑕』の主要人物・由良昂允元伯爵の先祖が登場。
  彼らの一族が「鳥」に憑かれた理由が明らかに。



◆「風の神」

  「風の神」とは、疫病の風邪をもたらす悪神のこと。

  小夜のため、そして自分自身のため、百介は最初で最後の「仕掛け」に臨む。