拡がれ!「愛ときずな」
★★★★★
親による子どもへの虐待は毎日のようにマスコミを賑わせている。
そのニュースを目にするごとに「かわいそうに・・」「なんとしたことか。」と多くの人々は胸を痛める。
しかし実際、虐待とは肉体のみならずどれほど子どもの精神発達を阻害するものなのか、そして被害者である子どものケアはどのようになされているのかを知る人はごく少数であろう。
私も多くの無知なる者のひとりであったが、本書を読み、虐待の真の意味での恐ろしさ、残酷さに鳥肌がたつ思いがした。
それでも主人公「舞ちゃん」が「心の医療センター」の医師、保育士、教師のチームワークのもと、自尊心をはぐくみ自立していく姿に安堵し、緊迫したシーンでは本を読む手に思わず力が入った。「舞ちゃん」が初めて文字を認識した件ではたまらず感涙してしまった。
作者椎名篤子氏と漫画家ごとう和氏の綿密な取材と構成力には、虐待防止とケアの現場への切なる祈りがこめられている。
その祈りは読み手へも着実に伝わっていく。その連鎖が「愛ときずな」となり社会へ拡がることを期待したい。
蛇足ではあるが「子ども手当て」はそのような被虐待児のケアへこそ篤くして欲しいものである。